目的・到達目標

(1993年10月22日制定,2007年2月12日初回改訂、2014年1月22日第2回改訂)

目次

【総論】
  • 臨床細胞遺伝学認定士制度の目的
  • 臨床細胞遺伝学認定士の役割
  • 臨床細胞遺伝学認定士の基本的姿勢
【各論】
  • 遺伝医学の基礎
  • 細胞遺伝学の基礎
  • 染色体検査の実際と精度管理
  • 先天異常と生殖障害の染色体検査
  • 出生前診断に関わる染色体検査
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体検査

総論

1.臨床細胞遺伝学認定士制度の目的

臨床細胞遺伝学認定士(以下認定士)の認定制度は,臨床検査として染色体検査にたずさわる医師,研究者および技術者を対象として,臨床細胞遺伝学の専門家の養成と認定を行い,わが国の医療における染色体検査の適切な実施を推進し,染色体検査の精度と技術の向上,および臨床細胞遺伝学のさらなる発展を目的とするものである.

2.臨床細胞遺伝学認定士の役割

染色体検査は,他の臨床検査と異なり,疾患の診断に直結する場合が多い.とりわけ生殖細胞系列の染色体検査結果は,被検者本人のみならず遺伝情報を共有する血縁者に対しても影響を及ぼすことがある.さらに出生前診断に関する検査の結果は,クライエントの妊娠と生殖に直接影響を及ぼすものである.また,白血病・リンパ腫,固形腫瘍等の診断のために体細胞染色体異常の検出を目的とする染色体検査は,病型分類,予後予測,治療法の選択,治療効果の判定など,医療上必須の検査となっている.したがって認定士は、臨床細胞遺伝学のみならず遺伝医学全般にわたる幅広い知識が要求され、適切な検査法を選択して高度な検査技術を駆使し、慎重かつ正確に判定結果を出すとともに、依頼者である臨床医に対して、診療に必要な情報を的確に伝える役割を担うものである。さらに細胞遺伝学的研究や,臨床細胞遺伝学の正しい知識の普及を通して,社会に貢献することも期待される.

3.臨床細胞遺伝学認定士の基本的姿勢
  • 倫理
    生命の尊厳を重んじる立場から,被検者や家族の人権,人格,プライバシーを尊重し,自らの職業的・社会的責任の重さを理解して業務を遂行する.
  • 他の医療従事者との連携
    臨床医,臨床遺伝専門医,および他の医療従事者との協力を惜しまず,また必要に応じて他の医療機関・検査施設と連携して問題解決にあたる.
  • 自己研鑚と学術的貢献
    常に自己研鑽に励み,医学・医療に関する社会的動向や生命倫理問題についての情報の収集・理解に努める.特に,細胞遺伝学に関連する新しい知識と技法の修得に努め,外部からの評価を積極的に受け入れて検査精度の向上を図る.また自らも細胞遺伝学の学術的な研究に貢献するよう努める.
  • 関連ガイドラインの遵守
    染色体検査に関連したガイドラインや倫理指針*を充分に理解し,それらを遵守した体制を整えて検査にのぞむ.

※「遺伝学的検査としての染色体検査ガイドライン」(日本人類遺伝学会,2006年10月),「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省,2004年12月),「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(日本医学会,2011年2月),「遺伝学的検査受託に関する倫理指針」(日本衛生検査所協会,2011年10月)

各論

1.遺伝医学の基礎

(一般目標)

  • 生殖細胞系列変異と体細胞変異についての違いを説明できる.
  • 遺伝子とタンパク質生合成との関係,および遺伝子発現の機序について,その概略を説明できる.
  • DNA・RNA・遺伝子・クロマチン・染色体・ゲノムの構造と関連を説明できる.
  • DNAと染色体の複製および細胞分裂のしくみを説明できる.
  • メンデルの法則と,ヒトのメンデル遺伝形質の遺伝様式の特徴を説明できる.
  • 生殖(遺伝情報の世代間伝達)の基礎を説明できる.
  • 変異の種類,バリエーション,多型についての概略を説明できる.
  • 非メンデル遺伝について説明できる.

(行動目標)

(1)知識

  • DNAから染色体への成り立ち:核酸,DNA,RNA,塩基対,相補性,ヌクレオソーム,ヒストン蛋白,非ヒストン蛋白,ソレノイド構造,クロマチン,染色体,ゲノム
  • 遺伝子発現・タンパク質生合成:遺伝子,構造遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,mRNA,tRNA,rRNA,cDNA,microRNA, lncRNA,転写,翻訳,逆転写,コドン,ポリペプチド,セントラルドグマ,RNA干渉,CpGアイランド,プロモーター,エクソン,イントロン,open reading frame (ORF),エンハンサー,転写開始点,プロセシング,スプライシング,キャップ構造,ポリAテール,
  • メンデル遺伝の法則と遺伝形質:優劣の法則,分離の法則,独立の法則,連鎖,優性,劣性,不完全優性,共優性,遺伝形質,遺伝子座,野生型,変異型,対立遺伝子,遺伝子型,表現型,ホモ接合,ヘテロ接合,複合ヘテロ接合,ヘミ接合,ナリ接合,常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝,X連鎖遺伝,遺伝的異質性,表現度,浸透率,表現促進,性腺モザイク
  • 非メンデル遺伝:多因子遺伝,量的形質,連続形質,2項分布,標準曲線,標準偏差,易罹患性,しきい値,致死効果,適応度,細胞質遺伝,ミトコンドリア遺伝,母系遺伝,ヘテロプラスミー,ホモプラスミー,閾値効果,組織特異性,DNAメチル化,遺伝子サイレンシング,エピジェネティクス・エピゲノム,ゲノム刷込み(ゲノムインプリンティング),片親性ダイソミー
  • 家系図:発端者,罹患者,保因者,配偶者,同胞,クライエント,近親婚,再発率
  • 生殖の基礎:生殖細胞,体細胞,始原生殖細胞,精原細胞,卵原細胞,精母細胞,卵母細胞,極体,精子,卵子,配偶子,受精,接合子,性腺
  • 遺伝子変異:ナンセンス変異,ミスセンス変異,インフレーム変異,サイレント変異,機能獲得型変異,機能喪失型変異,優性阻害効果,ハプロ不全,点突然変異,塩基置換,フレームシフト,欠失,重複,逆位,挿入,DNA修復,修復誤り,融合遺伝子,発現亢進,遺伝子増幅,突然変異原,環境変異原,突然変異率
  • 多型,バリエーション(多様性):多型の定義,制限酵素断片長多型(RFLP),VNTR(variable number of tandem repeat),ミニサテライト多型,マイクロサテライト多型, SNV (single nucleotide variation),SNP(single nucleotide polymorphism),欠失・挿入変異(indel),コピー数多型(CNV:copy number variation),DNA多型の応用,多型マーカー,DNAフィンガープリント
  • 遺伝学史:生物学と遺伝学,医学と遺伝学,細胞遺伝学,分子生物学と分子遺伝学,遺伝医学に関わる生命倫理
2.細胞遺伝学の基礎

(一般目標)

  • 染色体の形態と動態を,さまざまな遺伝学的・エピジェネティック現象と関連づけて説明できる.
  • 染色体異常の種類とその発生機構を説明できる.
  • ヒト染色体の各種検査法・解析法について説明でき,各症例に対して最も適した細胞遺伝学的・分子細胞遺伝学的解析法,必要な追加解析法を選択できる.
  • ヒト染色体の国際命名規約ならびに各種染色体異常の表記法に精通している.
  • 生殖細胞系列の各種染色体異常の臨床遺伝学的意義(疾患との関連)および包含される倫理的問題について説明できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の各種体細胞染色体異常の臨床的意義について説明できる.
  • 放射線の人体影響について説明できる.
  • 多能性幹細胞の医療や創薬への応用の意義,再生医療の安全確認のための培養幹細胞の品質評価の意義について説明できる.
  • ヒトゲノム研究の成果とゲノム情報の遺伝医学的な有用性を理解することができる.

(行動目標)

(1)知識

  • DNAから染色体への成り立ち:核酸,DNA,RNA,塩基対,相補性,ヌクレオソーム,ヒストン蛋白,非ヒストン蛋白,ソレノイド構造,クロマチン,染色体,ゲノム
  • 遺伝子発現・タンパク質生合成:遺伝子,構造遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,mRNA,tRNA,rRNA,cDNA,microRNA, lncRNA,転写,翻訳,逆転写,コドン,ポリペプチド,セントラルドグマ,RNA干渉,CpGアイランド,プロモーター,エクソン,イントロン,open reading frame (ORF),エンハンサー,転写開始点,プロセシング,スプライシング,キャップ構造,ポリAテール,
  • メンデル遺伝の法則と遺伝形質:優劣の法則,分離の法則,独立の法則,連鎖,優性,劣性,不完全優性,共優性,遺伝形質,遺伝子座,野生型,変異型,対立遺伝子,遺伝子型,表現型,ホモ接合,ヘテロ接合,複合ヘテロ接合,ヘミ接合,ナリ接合,常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝,X連鎖遺伝,遺伝的異質性,表現度,浸透率,表現促進,性腺モザイク
  • 非メンデル遺伝:多因子遺伝,量的形質,連続形質,2項分布,標準曲線,標準偏差,易罹患性,しきい値,致死効果,適応度,細胞質遺伝,ミトコンドリア遺伝,母系遺伝,ヘテロプラスミー,ホモプラスミー,閾値効果,組織特異性,DNAメチル化,遺伝子サイレンシング,エピジェネティクス・エピゲノム,ゲノム刷込み(ゲノムインプリンティング),片親性ダイソミー
  • 家系図:発端者,罹患者,保因者,配偶者,同胞,クライエント,近親婚,再発率
  • 生殖の基礎:生殖細胞,体細胞,始原生殖細胞,精原細胞,卵原細胞,精母細胞,卵母細胞,極体,精子,卵子,配偶子,受精,接合子,性腺
  • 遺伝子変異:ナンセンス変異,ミスセンス変異,インフレーム変異,サイレント変異,機能獲得型変異,機能喪失型変異,優性阻害効果,ハプロ不全,点突然変異,塩基置換,フレームシフト,欠失,重複,逆位,挿入,DNA修復,修復誤り,融合遺伝子,発現亢進,遺伝子増幅,突然変異原,環境変異原,突然変異率
  • 多型,バリエーション(多様性):多型の定義,制限酵素断片長多型(RFLP),VNTR(variable number of tandem repeat),ミニサテライト多型,マイクロサテライト多型, SNV (single nucleotide variation),SNP(single nucleotide polymorphism),欠失・挿入変異(indel),コピー数多型(CNV:copy number variation),DNA多型の応用,多型マーカー,DNAフィンガープリント
  • 遺伝学史:生物学と遺伝学,医学と遺伝学,細胞遺伝学,分子生物学と分子遺伝学,遺伝医学に関わる生命倫理
3.染色体検査の実際と精度管理

(一般目標)

  • 染色体検査に関する種々のガイドラインの内容を熟知し,実践することができる.
  • 細胞培養および染色体検査に必要な機器,器材,試薬類等の知識を有し,それらを準備・設置・調整することができる.また,機器の操作法と保守管理に精通している.
  • 検査の目的および検体試料の種類に応じて適切な染色体検査法を選択できる.
  • 適切な方法で細胞培養と収穫を行い,良質な染色体標本を作製して分染を行い,正確な核型分析を行うことができる.
  • ヒト染色体の分類と命名に関する国際標準規約(ISCN)に基づく核型の表記法に精通し,染色体検査結果を正確に報告できる.さらに結果の解釈を補足する情報や追加検査の必要性等を適切に伝えることができる.
  • 検査に供した固定細胞やスライド標本等の試料の保存法についての知識を有し,検体試料や染色体解析結果等の資料を適切に保管する体制をつくり実施することができる.
  • 検体受付から報告書作成に至る一連の検査工程ごとに必要な精度管理体制を敷いて実施することができる.
  • 新たな染色体検査関連技術について関心をもち,臨床的有用性について評価することができる.

(行動目標)

(1)技術

  • さまざまな検体試料ごとの適切な培養法と,固定細胞のスライドグラス上での展開法に習熟し,正確な核型分析が可能な良質な染色体標本を作製することができる.
  • 各種分染法およびFISH法等の染色体解析法の知識を有し,検査目的や染色体異常の種類に応じてこれらを正確に実施することができる.
  • 顕微鏡写真の撮影法や暗室技術(フィルムの現像,印画紙への焼き付けなど)あるいは画像解析システムの取り扱いに習熟している.
  • 検査の目的ごとに充分な精度で核型分析を行い,ISCNに基づく核型表記ができる.

(2)知識

  • ヒトの染色体検査関連ガイドライン:「遺伝学的検査としての染色体検査ガイドライン」など
  • 実験設備・機器:クリーンベンチ,恒温器,冷蔵庫,冷凍庫,保管庫,炭酸ガス培養装置,高圧蒸気滅菌装置,濾過滅菌装置,乾熱滅菌器,遠心器,倒立顕微鏡,実体顕微鏡,光学顕微鏡,位相差顕微鏡,蛍光顕微鏡,画像解析装置または写真撮影装置/写真現像処理設備,サーマルサイクラー,リアルタイムPCR装置,マイクロアレイスキャナー,キャピラリーシークエンサー,次世代シークエンサー,データベース管理用コンピュータ 等
  • 各種染色体分析法:「2.細胞遺伝学の基礎」の「知識2」参照
  • 試薬類:各種培養液, PHA,コラゲナーゼ,トリプシン,PBS,等培養に必要な試薬類,細胞分裂阻止剤(コルヒチン,コルセミド),チミジン,エチジウムブロマイド,低張液,カルノア固定液,その他細胞収穫・標本作成に必要な試薬,ギムザ液,キナクリンマスタード,ヘキスト33258, 5-ブロモデオキシウリジン,水酸化バリウム,硝酸銀,その他各種細胞分染法に必要な試薬類.各種DNAプローブ,ヌクレアーゼ,DNAポリメラーゼ,標識ヌクレオチド,SSC,ホルムアミド,BSA, Cot I DNA,界面活性剤,グリセリン,抗褪色封入剤,DAPI,プロピジウムイオダイド,その他FISH法に必要な試薬.
  • 核型分析,FISH解析,マイクロアレイ解析,その他の細胞遺伝学的検査の結果記載法に関する国際的規約:An International System for Human Cytogenetic Nomenclature (ISCN) (S.Karger,Basel)  *ISCN 2013/2009/2005/1995/1991/1985/1981/1978
4.先天異常と生殖障害の染色体分析

(一般目標)

  • 染色体検査の適応と目的を正確に説明できる.また,検査の結果予想される染色体異常の種類と頻度,主な染色体異常の臨床症状について説明できる.
  • 各症例に適合した染色体分析法を選択し,分染法による核型分析を実施することができ,場合によってFISH法,methylation-PCR法,MLPA法,マイクロアレイ法などの分子遺伝学的解析法等による追加検査の必要性・有用性・限界について説明できる.
  • ISCNに従って正常ないしは異常核型を記載し,依頼者に対して適切なコメントを付記して報告書を作成することができる.
  • 染色体異常症に関連した遺伝カウンセリングに必要な資料を準備することができる.
  • 検体試料から体細胞の培養株を樹立して保存することの重要性を説明できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 染色体異常症候群の種類とそれぞれの臨床症状の概略を説明できる.また,生殖障害に関しては,病態の概略を説明できる.
  • 染色体異常保因者から先天異常個体が生ずる機序を説明できる.
  • 一般集団(出生前集団,新生児集団など)における染色体突然変異率について説明できる.
  • 先天性多発奇形,精神遅滞,自閉症スペクトラム例における潜在性の染色体微細欠失・重複(不均衡型サブテロメア再構成を含む)の頻度,臨床的意義,検出法について説明できる.
  • 先天異常を伴った均衡型染色体構造異常(DBCRs)に伴う先天異常の発症機序を説明できる.

(2)知識

  • 染色体異常症候群:ダウン症候群,18トリソミー症候群,13トリソミー症候群,4p- 症候群,5p- 症候群,8トリソミーモザイク,9トリソミーモザイク,Pallister-Killian症候群(12pテトラソミーモザイク),エマヌエル症候群(11/22部分トリソミー)などのさまざまな部分トリソミー症候群/モノソミー症候群,クラインフェルター男性,ターナー女性,XYY男性,XXX女性,XXXXY症候群,性染色体の低頻度モザイク,脆弱X症候群
  • 染色体不安定症候群:末梢血管拡張性運動失調症,ファンコニ貧血症,ブルーム症候群,色素性乾皮症,染色分体早期解離(PCS:premature chromatid separation),ICF症候群,ナイミーヘン症候群,ロバーツ症候群
  • 隣接遺伝子症候群・微細欠失/重複症候群(染色体領域,責任遺伝子):1p36欠失,4p欠失,5p欠失,8p23.1欠失症候群(GATA4),ランガー・ギーディオン症候群(8q24.1,EXT1/TRPS1),Kreefstra症候群(9q34欠失)無虹彩・ウィルムス腫瘍症候群(11p13欠失,PAX6, WT1),網膜芽細胞腫(13q14欠失など,RB1),Xp22欠失(MRX, STS, KAL1, OA1, MLS),Xp21欠失(DAX, GK, DMD),Sotos症候群(5q35欠失など, NSD1),Williams症候群(7q11.2欠失,ELN), Prader-Willi症候群(15q11-q13欠失など),Angelman症候群(15q11-q13欠失など,UBE3A),15q13欠失症候群(KLF13),16p13.11欠失症候群(MYH11),16p12.2-p11.2欠失症候群,Miller-Dieker症候群(17p13欠失),Smith-Magenis症候群(17p11.2欠失,RAI1), Charcot-Marie-Tooth neuropathy type 1A (CMT1A)(17p11.2重複,PMP22),17q21欠失症候群(KANSL1),hereditary neuropathy with liability to pressure palsies (HNPP)(17p11.2欠失,PMP22),22q11.2欠失(DGS/VCFS)症候群, 22q13欠失症候群,Pelizaeus-Merzbacher 病 (PMD)(Xq22重複など,PLP1),Xq28重複症候群など.
  • 生殖障害:原発性無月経,不育症,習慣流産,死産,不妊症,無精子症,乏精子症,精子無力症,Y染色体微小欠失
  • 染色体異常症関連の遺伝カウンセリングに必要な情報:染色体異常発生のメカニズム,染色体異常の頻度,染色体異常の再発率,染色体異常の胎内淘汰,染色体異常の遺伝的荷重,各染色体異常症の臨床症状の概略・明らかとなっているものについては遺伝子との関連,参考書・文献,オンラインデータベース,OMIM (Online Mendelian Inheritance in Man),GeneTests,PubMed,UCSC Genome Browser (University of California, Santa Cruz),DGV (Database of Genomic Variant),DECIPHER (Database of Chromosomal Imbalance and Phenotype in Humans using Ensemble Resources),ISCA (International Standards for Cytogenetic Arrays Consortium),GeneCards,「染色体異常をみつけたら」,等,インフォームド・コンセント
  • 培養細胞株の樹立と凍結保存:線維芽細胞,Bリンパ芽球様細胞株,EBウイルス,ES細胞,iPS細胞
5.出生前診断に関わる染色体分析

(一般目標)

  • 出生前診断に関わる社会的,倫理的問題の概略と世論の動向,および関連学会(日本医学会,日本人類遺伝学会,日本遺伝カウンセリング学会,日本産科婦人科学会など)の見解などを理解しており,社会的・倫理的に適切な対応をとることができる.
  • スクリーニング検査の意義,母体血清マーカーや超音波ソフトマーカーと染色体異常の関係について理解している.
  • 無侵襲的出生前検査法(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)の原理(cell free DNA)と概要,意義・検出精度・限界,検査実施の留意点などを理解している.
  • 出生前診断を行う理由と手技(絨毛採取,羊水採取,胎児血採取,および超音波断層法など関連する技術や検査法)の概略とその限界と問題点を理解している.
  • 染色体分析を含む出生前診断に関わる細胞遺伝学的分析を実際に実施することができ,また,その分析上の限界と問題点を理解している.
  • 検査依頼者から分析に必要な情報を適切に収集することができる.また,分析結果を的確に検査依頼者に報告できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 依頼された検体が適切に採取されたものか否か,検査に必要な条件を満たしているか否かを判断し,胎児に関する情報を最大限得るために,適切な培養法,検査法を選択することができる.検査材料にあわせた適切な検体前処理が実施できる。細胞の培養状態を観察し、標本作製に適する時期を判断できる。
  • 検体の取り違いを防止するために必要な手段を講じることができる.
  • 出生前診断に関わる分析を具体的に実施することができ,結果に関する評価を行うことができる.
  • 再検査の可能性や意義を検査依頼者に適切に説明することができる.
  • 検査目的,検査法,検査結果,結果の解釈などに関して,依頼者と医学的,社会的,倫理的な視点から適切に情報交換することができる.
  • 検査結果とその評価が適当なものであったかどうかを,科学的,社会的,倫理的に妥当な範囲で追跡・検討することができる.

(2)知識

  • 出生前診断の適応:高齢妊娠,染色体異常保因者,染色体異常児出産の既往,母体血清マーカーによるスクリーニング検査におけるハイリスク判定例,胎児NT肥厚,胎児奇形など.
  • スクリーニング検査のマーカー:第一三半期の血清マーカー(PAPP-A, free-hCG, hCG),第二三半期の血清マーカー(free hCG, hCG, AFP, uE3, inhibin A),超音波ソフトマーカー [胎児後頚部浮腫(NT),鼻骨形成(NB),三尖弁閉鎖不全(TR),静脈管逆流(DV)]
  • 妊娠中の異常:子宮内胎児発育遅延,羊水過多,羊水過少,胎児奇形
  • 疾患:染色体異常症,胎児奇形,先天性代謝異常症,など
  • 無侵襲的出生前検査において、検出できる染色体異常を理解している.感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、有病率の意味との関係について理解している.
  • 検体採取法:羊水採取,絨毛採取(絨毛であることを確認する方法も含む),胎児血採取(胎児血であることを確認する方法を含む),超音波検査.
  • 細胞培養法:培養液,フラスコ法とin situ法(それぞれの実施法と長所・短所)
  • 検査結果の判定:真性・偽性モザイクの判定法,胎盤組織に限定したモザイク(CPM)の判定法,母体組織混入の判定法
  • 染色体異常以外の出生前診断:遺伝子診断,酵素診断など
  • 妊娠と胎児の発育に関する基礎的な知識
  • 母性の生命健康を保護する法律に関する知識
6.白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体分析

(一般目標)

  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の染色体検査の適応と目的を的確に説明できる.
  • 疾患例に応じて適切な検体試料と染色体検査法を選択できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の臨床像,診断および治療の概略を説明できる.
  • 腫瘍に特徴的な染色体異常と細胞・組織形態および免疫学的表現型との関係を説明できる.
  • 腫瘍に特徴的な染色体異常と遺伝子異常の関係を説明できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の発生機序における染色体異常の役割を分子遺伝学的に概略説明できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 白血病・リンパ腫の細胞培養ができる.
  • 固形腫瘍から細胞を解離し,培養することができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体標本の作製ができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の核型分析ができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞における核型異常の判定能力を有しISCNの国際規約に従って異常核型を記載することができる.
  • 染色体分析結果が臨床上どのような意義をもつかについて,適切なコメントを記載できる.

(2)知識

  • 分子細胞遺伝学の知識:各病型あるいは腫瘍に特有な染色体異常,dmin,hsr,マーカー染色体,ISCN,がん遺伝子,がん抑制遺伝子,DNAミスマッチ修復遺伝子,2ヒット(2段階)仮説,ヘテロ接合性の消失(LOH),融合遺伝子,発現亢進,遺伝子増幅,高発がん性遺伝疾患,発がんの多段階説,染色体異常と免疫学的表現型,フローサイトメトリー,腫瘍細胞遺伝学に関するオンラインデータベース(Mitelmanデータベース等)
  • 臨床上の知識:造血器腫瘍,上皮性腫瘍,肉腫,FAB分類,WHO分類(2008年版),免疫学的表現型リスク分類,悪性腫瘍の発病・寛解・治癒・再発,化学療法,分子標的療法,放射線療法,骨髄移植,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植
  • 骨髄系腫瘍:骨髄増殖性腫瘍,骨髄異形成症候群,急性骨髄性白血病,慢性骨髄性白血病,好酸球増加症,t(9;22)(q34;q11)/BCR-ABL1,t(8;21)(q22;q22)/RUNX1-RUNX1T1(AML1-ETO), t(15;17)(q22;q12)/PML-RARA,inv(16)(p13.1q22)あるいはt(16;16)(p13.1;q22)/ CBFB-MYH11,t(9;11)(p22;q23)/MLLT3-MLL,t(v;11q23)/MLL遺伝子再構成, t(6;9)(p23;q34)/DEK-NUP214,inv(3)(q21q26.2)またはt(3;3)( q21q26.2)/RPN1-EVI1,t(1;22)(p13;q13)/RBM15-MKL1,JAK2遺伝子変異,NPM1遺伝子変異、CEBPA遺伝子変異、FLT3遺伝子変異、KIT遺伝子変異、付加的異常(-X, -Y, +8, i(17)(q10), +19, +21, +Ph)
  • リンパ系腫瘍:急性リンパ性白血病,慢性リンパ性白血病,形質細胞腫瘍,濾胞性リンパ腫,バーキットリンパ腫,t(12;21)(p13;q22)/TEL-AML1(ETV6-RUNX1),高2倍体性B-ALL,低2倍体性B-ALL,t(1;19)(q23;p13.3)/E2A-PBX1(TCF3-PBX1),t(5;14)(q31;q32)/IL3-IGH,t(8;14)(q24;q32)/IGH-MYC,t(14;18)(q32;q21)/IGH-BCL2,14q11.2転座型T-ALL/TRA&TRD,7q35転座型T-ALL/TRB,t(2;5)(q23;q35)/NPM-ALK,他ALK遺伝子再構成 t(9;22)(q34;q11)/BCR-ABL1,t(v;11q23)/MLL遺伝子再構成
  • 固形腫瘍:上皮系腫瘍,骨軟部腫瘍,t(7;16)(q33;p11)/FUS-CREB3L2, t(11;22)(p13;q12)/EWSR1-WT1,t(11;22)(q24;q12)/EWSR1-FLI1,他EWSR1遺伝子再構成, inv(2)(p21;p23)/EML4-ALK,t(2;13)(q36;q14)/PAX3-FOXO1A,t(x;18)(p11.2;q11.2)/SS18(SYT)-SSX1, t(12;16)(q13;p11)/FUS- DDIT3 (CHOP), t(12;16)(q13;p11)/FUS-ATF1, HER2遺伝子増幅