目的・到達目標

臨床細胞遺伝学認定士制度 到達目標改訂について


網羅的ゲノム解析技術であるマイクロアレイ染色体検査あるいはNGS染色体検査の臨床的検査技術としての展開を受け、当制度として細胞ゲノム(CNV)検査領域を対象領域として含むべく到達目標の改訂を行いました(到達目標自体の改訂は、2007年2月、2014年1月に続いて3回目になります)。なお、認定士資格試験への反映は2022年度の認定試験からといたします。


(1993年10月22日制定,2007年2月12日初回改訂、2014年1月22日第2回改訂、2020年8月5日第3回改訂)

目次

【総論】
  • 臨床細胞遺伝学認定士制度の目的
  • 臨床細胞遺伝学認定士の役割臨床細胞遺伝学認定士の基本的姿勢
【各論】
  • 遺伝医学の基礎
  • 細胞遺伝学の基礎
  • 染色体検査の実際と精度管理
  • 先天異常と生殖障害の染色体検査
  • 出生前診断に関わる染色体検査
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体検査
  • 網羅的ゲノム解析技術による細胞ゲノム学的検査

総論

1.臨床細胞遺伝学認定士制度の目的

臨床細胞遺伝学認定士(以下認定士)の認定制度は,臨床検査として染色体検査および細胞ゲノム学(cytogenomics)的検査にたずさわる医師,研究者および技術者を対象として,臨床細胞遺伝学および臨床細胞ゲノム学の専門家の養成と認定を行い,わが国の医療における染色体検査・細胞ゲノム学的検査の適切な実施を推進し,染色体検査・細胞ゲノム学的検査の精度と技術の向上,および臨床細胞遺伝学・臨床細胞ゲノム学のさらなる発展を目的とするものである.

2.臨床細胞遺伝学認定士の役割

染色体検査は,他の臨床検査と異なり,疾患の診断に直結する場合が多い.とりわけ生殖細胞系列の染色体検査結果は,被検者本人のみならず遺伝情報を共有する血縁者に対しても影響を及ぼすことがあり,出生前遺伝学的検査ならびに着床前遺伝学的検査に関する検査の結果は,クライエントの妊娠と生殖に直接影響を及ぼすものである.一方,白血病・リンパ腫,固形腫瘍等の診断のために体細胞染色体異常の検出を目的とする染色体検査は,病型分類,予後予測,治療法の選択,治療効果の判定など,医療上必須の検査となっている.さらに今日細胞遺伝学は,染色体検査のみならず網羅的ゲノム解析手法による微細なゲノムのコピー数バリエーション(copy number variation)の検出を含めた細胞ゲノム学的検査をも包含するものとなった.認定士は,臨床細胞遺伝学・細胞ゲノム学を柱に遺伝医学全般にわたる幅広い知識を持ち,適切な検査法を選択して高度な検査技術を駆使し,慎重かつ正確に判定結果を出すとともに,依頼者である臨床医に対して,診療および遺伝カウンセリングに必要な情報を的確に伝える役割を担うものである.さらに細胞遺伝学的・細胞ゲノム学的研究や,臨床細胞遺伝学・臨床細胞ゲノム学の正しい知識の普及を通して,社会に貢献することが期待される.

3.臨床細胞遺伝学認定士の基本的姿勢
  • 倫理
    生命の尊厳を重んじる立場から,被検者や家族の人権,人格,プライバシーを尊重し,自らの職業的・社会的責任の重さを理解して業務を遂行する.
  • 他の医療従事者との連携
    臨床医,臨床遺伝専門医,認定遺伝カウンセラー(R),および他の医療従事者との協力を惜しまず,また必要に応じて他の医療機関・検査施設と連携して問題解決にあたる.
  • 自己研鑚と学術的貢献
    常に自己研鑽に励み,医学・医療に関する社会的動向や生命倫理問題についての情報の収集・理解に努める.特に,細胞遺伝学に関連する新しい知識と技法の修得に努め,外部からの評価を積極的に受け入れて検査精度の向上を図る.また自らも細胞遺伝学・細胞ゲノム学の学術的な研究に貢献するよう努める.
  • 関連ガイドラインの遵守
    染色体検査や細胞ゲノム学的検査に関連したガイドラインや倫理指針*を充分に理解し,それらを遵守した体制を整えて検査にのぞむ.

※「遺伝学的検査としての染色体検査ガイドライン」(日本人類遺伝学会,2006年10月),「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省,2004年12月),「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(日本医学会,2011年2月),「遺伝学的検査受託に関する倫理指針」(日本衛生検査所協会,2011年10月),「マイクロアレイ染色体検査(cytogenetic microarray)の臨床応用について」(日本小児遺伝学会,2012年1月),「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」(日本産科婦人科学会,2013年6月),「着床前診断」に関する見解(日本産科婦人科学会,2019年5月)など(2020年3月現在)

# 新たに公表される関連ガイドラインについての情報収集にも努めなければならない.

各論

1.遺伝医学の基礎

(一般目標)

  • 生殖細胞系列変異と体細胞変異についての違いを説明できる.
  • 遺伝子とタンパク質生合成との関係,および遺伝子発現の機序について,その概略を説明できる.
  • DNA・RNA・遺伝子・クロマチン・染色体・ゲノムの構造と関連を説明できる.
  • DNAと染色体の複製および細胞分裂のしくみを説明できる.
  • メンデルの法則と,ヒトのメンデル遺伝形質の遺伝様式の特徴を説明できる.
  • 減数分裂を含む生殖(遺伝情報の世代間伝達)の基礎を説明できる.
  • 変異の種類,バリエーション,多型についての概略を説明できる.
  • 非メンデル遺伝について説明できる.
  • ゲノムの多様性に基づく個体の多様性を説明できる.

(行動目標)

(1)知識

  • DNAから染色体への成り立ち:核酸,DNA,RNA,塩基対,相補性,ヌクレオソーム,ヒストン蛋白,非ヒストン蛋白,ソレノイド構造,クロマチン,染色体,ゲノム
  • 遺伝子発現・タンパク質生合成:遺伝子,構造遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,mRNA,tRNA,rRNA,cDNA,microRNA, lncRNA,転写,翻訳,逆転写,コドン,ポリペプチド,セントラルドグマ,RNA干渉,CpGアイランド,プロモーター,エクソン,イントロン,open reading frame (ORF),エンハンサー,転写開始点,プロセシング,スプライシング,キャップ構造,ポリAテール
  • メンデル遺伝の法則と遺伝形質:優劣の法則,分離の法則,独立の法則,連鎖,優性,劣性,不完全優性,共優性,遺伝形質,遺伝子座,野生型,変異型,対立遺伝子,遺伝子型,表現型,ホモ接合,ヘテロ接合,複合ヘテロ接合,ヘミ接合,ナリ接合,常染色体優性遺伝,常染色体劣性遺伝,X連鎖遺伝,遺伝的異質性,表現度,浸透率,表現促進,性腺モザイク
  • 非メンデル遺伝:多因子遺伝,量的形質,連続形質,2項分布,標準曲線,標準偏差,易罹患性,しきい値,致死効果,適応度,細胞質遺伝,ミトコンドリア遺伝,母系遺伝,ヘテロプラスミー,ホモプラスミー,閾値効果,組織特異性,DNAメチル化,遺伝子サイレンシング,エピジェネティクス・エピゲノム,ゲノム刷込み(ゲノムインプリンティング),片親性ダイソミー
  • 家系図:発端者,罹患者,保因者,配偶者,同胞,クライエント,近親婚,再発率
  • 生殖の基礎:生殖細胞,体細胞,始原生殖細胞,精原細胞,卵原細胞,精母細胞,卵母細胞,極体,精子,卵子,配偶子,受精,接合子,性腺
  • 遺伝子変異:ナンセンス変異,ミスセンス変異,インフレーム変異,サイレント変異,機能獲得型変異,機能喪失型変異,優性阻害効果,ハプロ不全(haploinsufficiency),重複感受性(triplosensitivity),点突然変異,塩基置換,フレームシフト,欠失,重複,逆位,挿入,DNA修復,修復誤り,融合遺伝子,発現亢進,遺伝子増幅,突然変異原,環境変異原,突然変異率,体細胞モザイク
  • 多型,バリエーション(多様性):多型の定義,制限酵素断片長多型(RFLP),VNTR(variable number of tandem repeat),ミニサテライト多型,マイクロサテライト多型, SNV (single nucleotide variation),SNP(single nucleotide polymorphism),欠失・挿入変異(indel),コピー数バリエーション(CNV:copy number variation),構造多型(structural variant, または structural variation ),DNA多型の応用,多型マーカー,DNAフィンガープリント
  • 遺伝学史:生物学と遺伝学,医学と遺伝学,細胞遺伝学,分子生物学と分子遺伝学,遺伝医学に関わる生命倫理
2.細胞遺伝学の基礎

(一般目標)

  • 染色体の形態と動態を,さまざまな遺伝学的・エピジェネティック現象と関連づけて説明できる.
  • 染色体異常の種類とその発生機構を説明できる.
  • ヒト染色体の各種検査法・解析法について説明でき,各症例に対して最も適した細胞遺伝学的・分子細胞遺伝学的解析法,分子遺伝学的解析法,網羅的ゲノム学的・網羅的細胞ゲノム学的解析法等,必要な追加解析法を選択できる.
  • ヒト染色体の国際命名規約ならびに各種染色体異常/細胞ゲノムバリエーションの表記法に精通している.
  • 生殖細胞系列の各種染色体異常/細胞ゲノムバリエーションの臨床遺伝学的意義(疾患との関連)および包含される倫理的問題について説明できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の各種体細胞染色体異常の臨床的意義について説明できる.
  • 放射線の人体影響について説明できる.
  • 多能性幹細胞の医療や創薬への応用の意義,再生医療の安全確認のための培養幹細胞の品質評価の意義について説明できる.
  • ヒトゲノム研究の成果とゲノム情報の遺伝医学的な有用性を理解することができる.
  • ヒトゲノムに生じる変異の種類や頻度をもとに多様性を理解し,表現型や疾患との関連性を説明できる.

(行動目標)

(1)知識

  • 染色体の遺伝学的基礎:常染色体,性染色体,染色分体(姉妹染色分体),動原体(着糸点,セントロメア),染色体末端(テロメア),付随体,短腕,長腕,二次狭窄,核小体形成部位,染色体異形,中部動原体型,端部動原体型,次中部動原体型,細胞周期,分裂期(M期),間期,S期,G1期,G2期,G0期,DNA合成(複製),半保存的複製,レプリコン,体細胞分裂,二倍性,半数性(ハプロイド),減数分裂(成熟分裂),交叉(乗換え),不均等交叉,キアズマ,組換え,連鎖,相同染色体,対合,二価染色体,細糸期,接合期,厚(太)糸期(パキテン期),複糸期,移動期,紡錘糸,紡錘体,バンド,サブバンド,ユークロマチン(真性染色質),ヘテロクロマチン(異質染色質),X染色体不活化現象,XIST(X INACTIVATION-SPECIFIC TRANSCRIPT)遺伝子,遺伝子量補償,偽常染色体領域(PAR:pseudoautosomal region),エピジェネティクス,性染色質,X-染色質(クロマチン),Y-染色質(クロマチン),XX男性,XY女性,脆弱部位,テロメラーゼ
  • 染色体の検査法:各種組織培養法(末梢血,リンパ球,皮膚片,骨髄,羊水,絨毛,腫瘍組織・細胞,多能性幹細胞,その他の組織),標本作製法(展開),核型分析,染色体分染法(Q染色法,G染色法,R染色法,C染色法,NOR染色法,Cd染色法,制限酵素消化分染法,多重染色法,高精度分染法,姉妹染色分体分染法),蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法,染色体FISH法,間期核FISH法,ファイバーFISH法,各種プローブ(サテライトプローブ,ペインティングプローブ,領域特異的プローブ,サブテロメアプローブ),染色体顕微切断法,染色体comparative genomic hybridization(CGH)法,24色FISH法(SKY法/M-FISH法)
  • 分子遺伝学的手法を用いた染色体解析法:サンガーシーケンス法,次世代シークエンス法(NGS),サザンブロッティング法,DNA多型(RFLP,VNTR,STR,SNP,SNV)解析法,DNAメチル化解析法,RT-PCR法,マルチプレックスPCR法,定量PCR法,熱変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC:denaturing high-performance liquid chromatography)法,multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA)法,リアルタイムPCR法,digital PCR法
  • 網羅的ゲノム解析技術による細胞ゲノム学的検査
    マイクロアレイ染色体検査(CGHアレイ法,SNPアレイ法),NGS染色体検査,次世代(短鎖型(short read),大量並列型)シークエンス,ゲノムシークエンス,アンプリコンシークエンス,キャプチャーシークエンス, エクソームシークエンス,1分子シークエンス,長鎖(long read)シークエンス
  • 染色体異常の種類と生成機構:構造異常,再構成,数的異常,倍数性異常,染色分体型異常,染色体型異常,ギャップ,切断,再結合,染色分体交換,派生的染色体型異常,欠失,重複,相互転座,性染色体/常染色体間転座,ロバートソン型転座,派生染色体,組換え染色体,逆位,端部欠失+逆位重複,環状(リング)染色体,染色体断片,二動原体染色体,同腕染色体,マーカー染色体,姉妹染色分体交換,一価染色体,三価染色体,四価染色体,交互分離,隣接T型分離,隣接U型分離,3:1分離,染色体不分離,異数性,ナリソミー,モノソミー,トリソミー,テトラソミー,倍数性,三倍性,四倍性,二雄核受精,二雌核受精,モザイク,性腺モザイク,胎盤モザイク,キメラ,片親性ダイソミー(UPD:Uniparental Disomy),イソダイソミー,ヘテロダイソミー,構造バリアント(SVs:structural variants),DNA修復,相同組換え,非相同末端結合(NHEJ:non-homologous end joining),low copy repeats (LCRs),非アレル間相同組換え(NAHR:non-allelic homologous recombination),fork stalling and template switching (FoSTeS),microhomology-mediated break-induced replication (MMBIR),複雑構造異常(CCR:complex chromosome rearrangement),染色体破砕現象(chromothripsis)
  • 染色体異形:染色体異形(heteromorphism,染色体の正常変異)と多型の違い,染色体異形の種類,ユークロマチンバリアント
  • 先天性の染色体異常と疾病:自然淘汰,常染色体異常症,性染色体異常症,先天異常,隣接遺伝子症候群,微細欠失/重複症候群,ゲノム病,先天異常を伴った均衡型構造異常(DBCRs: disease-associated balanced chromosome rearrangements),サブテロメア再構成,全胞状奇胎,部分胞状奇胎,卵巣奇形腫,ゲノム刷込み(ゲノム・インプリンティング),片親性ダイソミー,初期胚モザイク,トリソミーレスキュー,モノソミーレスキュー,体細胞組み換え,配偶子補完,習慣流産,不妊症,自然流産,死産
  • 後天性の染色体異常と疾病:白血病・リンパ腫と染色体転座,固形腫瘍と染色体転座・欠失,遺伝子増幅,神経芽細胞腫とdmin(double minutes)/hsr(homogeneously staining region) ,DNAメチル化異常,クロマチンリモデリング異常,腫瘍由来細胞株
  • 放射線の人体影響:被ばく線量,急性影響,晩発影響,低線量被ばく,二動原体染色体,染色体破片,環状染色体,転座染色体
  • 再生医療の安全確認のための培養幹細胞の品質評価:多能性幹細胞や体性幹細胞の種類(ES細胞,iPS細胞)や樹立方法,培養法,頻度の高い異数性異常の種類
  • ゲノム医学:ヒトゲノムプロジェクト,HapMapプロジェクト,1000人ゲノムプロジェクト,東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo),Human Genetic Variation Database(HGVD),The Genome Aggregation Consortium(gnomAD),ゲノムの構造,遺伝的地図,物理的地図,遺伝的連鎖地図,染色体地図,ハプロタイプ地図,連鎖不平衡地図,疾患座位,候補遺伝子,遺伝子マッピング,ポジショナルクローニング,責任遺伝子,感受性遺伝子,SNPアレイ,連鎖解析,連鎖不平衡,ロッドスコア,罹患同胞対法,相関解析法,伝達不平衡,ゲノムワイド関連解析(GWAS),ホモ接合性マッピング,identity by decent(IBD),Regions of homozygosity (ROH),ゲノムデータベース,ホモロジー検索,機能解析,細胞雑種,次世代シーケンサー,全ゲノムシーケンス,エクソームシーケンス,ターゲットシーケンス,ChIPシーケンス,de novoシーケンス,RNAシーケンス,人工ヌクレアーゼ(ZFN,TALEN,CRISPR/Cas),ゲノム編集
3.染色体検査の実際と精度管理

(一般目標)

  • 医療法および臨床検査技師法等に関する法律に準拠した構造設備,管理組織,検体検査の精度確保の方法により,染色体検査や遺伝子関連検査を適正に実施することができる.
  • 遺伝学的検査の臨床的妥当性,分析的妥当性,臨床的有用性などの科学的根拠を説明できる.
  • 感度と特異度を根拠に検査の精度を科学的に説明できる.
  • 染色体検査に関する種々のガイドラインの内容を熟知し,実践することができる.
  • 細胞培養および染色体検査に必要な機器,器材,試薬類等の知識を有し,それらを準備・設置・調整することができる.また,機器の操作法と保守管理に精通している.
  • 検査の目的および検体試料の種類に応じて適切な染色体検査法を選択できる.
  • 適切な方法で細胞培養と収穫を行い,良質な染色体標本を作製して分染を行い,正確な核型分析を行うことができる.
  • ヒト染色体の分類と命名に関する国際標準規約(An International System for Human Cytogenomic Nomenclature (ISCN) (S.Karger,Basel))に基づく核型の表記法に精通し,染色体検査結果を正確に報告できる.さらに結果の解釈を補足する情報や追加検査の必要性等を適切に伝えることができる.
  • 検査に供した固定細胞やスライド標本等の試料の保存法についての知識を有し,検体試料や染色体解析結果等の資料を適切に保管する体制をつくり実施することができる.
  • 検体受付から報告書作成に至る一連の工程ごとに必要な精度管理体制を敷いて検査を実施することができる.
  • 新たな染色体検査関連技術について関心をもち,有用性を検討し,評価することができる.

(行動目標)

(1)技術

  • さまざまな検体試料ごとの適切な培養法と,固定細胞のスライドグラス上での展開法に習熟し,正確な核型分析が可能な良質な染色体標本を作製することができる.
  • 各種分染法等の染色体解析法の知識を有し,検査目的や染色体異常の種類に応じてこれらを正確に実施することができる.
  • 各種FISH法の解析法の知識を有し,検査目的や染色体異常の種類に応じて,解析に必要なプローブミックスをプローブの種類や標識蛍光色を考慮し選択し,これらを正確に実施することができる.
  • 顕微鏡写真の撮影法や暗室技術(フィルムの現像,印画紙への焼き付けなど)あるいは画像解析システムの取り扱いに習熟している.
  • 検査の目的ごとに充分な精度で核型分析,FISH解析を行い,最新のISCNに基づく核型表記ができる.
  • 既知の試料や標本を利用した内部精度管理を定常的に実施するとともに,可能な限り外部機関・組織が実施するサーベイに参加して結果を評価し,品質向上に繋げることができる.

(2)知識

  • ヒトの染色体検査関連ガイドライン:「遺伝学的検査としての染色体検査ガイドライン」など
  • 実験設備・機器:クリーンベンチ,恒温器,冷蔵庫,冷凍庫,保管庫,炭酸ガス培養装置,高圧蒸気滅菌装置,濾過滅菌装置,乾熱滅菌器,遠心器,倒立顕微鏡,実体顕微鏡,光学顕微鏡,位相差顕微鏡,蛍光顕微鏡,画像解析装置または写真撮影装置/写真現像処理設備,サーマルサイクラー,リアルタイムPCR装置,マイクロアレイスキャナー,キャピラリーシークエンサー,次世代シークエンサー,データベース管理用コンピュータ 等
  • 各種染色体分析法:「2.細胞遺伝学の基礎」の「知識2」参照
  • 試薬類:各種培養液, フィトヘムアグルチニン(PHA),コラゲナーゼ,トリプシン,リン酸緩衝液(PBS),等培養に必要な試薬類,細胞分裂阻止剤(コルヒチン,コルセミド),チミジン,エチジウムブロマイド,低張液,カルノア固定液,その他細胞収穫・標本作成に必要な試薬,ギムザ液,キナクリンマスタード,ヘキスト33258, 5-ブロモデオキシウリジン,水酸化バリウム,硝酸銀,その他各種細胞分染法に必要な試薬類.各種DNAプローブ,ヌクレアーゼ,DNAポリメラーゼ,標識ヌクレオチド,塩化ナトリウム・クエン酸ナトリウム溶液(SSC),ホルムアミド,ウシ血清アルブミン(BSA), Cot-1 DNA,界面活性剤,グリセリン,抗褪色封入剤,4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI),プロピジウムイオダイド(PI),その他FISH法に必要な試薬
  • 核型分析,FISH解析,マイクロアレイ解析,その他の細胞遺伝学的検査の結果記載法に関する国際的規約:An International System for Human Cytogenomic Nomenclature (ISCN)
    *最新版は2016年版(2019年12月現在),それ以前に,2013/ 2009/ 2005/ 1995/ 1991/ 1985/ 1981/ 1978年版.シーケンスバリアント記載に関する国際的規約: Human Genome Variation Society (HGVS) Sequence Variant Nomenclature (http://varnomen.hgvs.org).HGVSとISCNが推奨する複雑なバリアントの記載方法 (http://varnomen.hgvs.org/recommendations/DNA/variant/complex/)
  • 精度管理の方法:内部精度管理,陽性検体,陰性検体,標準物質,ブラインドチェック,内部監査,外部精度管理,精度管理調査(サーベイ),クロスチェック,技能試験,ISO15189,米国病理医協会(College of American Pathologist, CAP)(https://www.cap.org),CAP 検査室改善技量試験 (https://www.cap.org/laboratory-improvement/proficiency-testing),the European Molecular Genetics Quality Network (EMQN)( https://www.emqn.org),Genomic Quality Assessment (GenQA)(https://www.genqa.org)
4.先天異常と生殖障害の染色体分析

(一般目標)

  • 染色体検査の適応と目的を正確に説明できる.また,検査の結果予想される染色体異常の種類と頻度,主な染色体異常の臨床症状について説明できる.
  • 各症例に適合した染色体分析法を選択し,分染法による核型分析を実施することができる.
  • ISCNに従って正常ないしは異常核型を記載し,依頼者に対して,場合によってFISH法,methylation-PCR法,MLPA法,マイクロアレイ法などの分子遺伝学的解析法等による追加検査の必要性・有用性・限界について説明を含む適切なコメントを付記して報告書を作成することができる.
  • 染色体異常症に関連した遺伝カウンセリングに必要な資料を準備することができる.
  • 検体試料から体細胞の培養株を樹立して保存することの重要性を説明できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 主要な染色体異常症候群の種類,発生機序,再発率,それぞれの臨床症状の概略を説明できる.また,生殖障害に関しては,病態の概略を説明できる.
  • 染色体均衡型構造異常保因者から当該染色体の不均衡型構造異常を伴う先天異常個体が生ずる機序を説明できる.
  • 一般集団(出生前集団,新生児集団など)における染色体突然変異率について説明できる.
  • 先天性多発奇形,精神遅滞,発達遅滞,自閉症スペクトラム例における潜在性の染色体微細欠失・重複(不均衡型サブテロメア再構成を含む)の頻度,臨床的意義,検出法について説明できる.
  • 先天異常を伴った均衡型染色体構造異常(DBCRs)に伴う先天異常の発症機序を説明できる.

(2)知識

  • 染色体異常症候群:ダウン(Down)症候群,18トリソミー症候群,13トリソミー症候群,4p- 症候群,5p- 症候群,8トリソミーモザイク,9トリソミーモザイク,Pallister-Killian症候群(12pテトラソミーモザイク),エマヌエル(Emanuel)症候群(11/22混合トリソミー),キャットアイ症候群(22q11テトラソミー),などのさまざまな染色体の部分トリソミー/部分モノソミー症候群およびその合併,クラインフェルター男性,ターナー(Turner)女性,XYY男性,XXX女性,XXXXY症候群,性染色体の低頻度モザイク,脆弱X症候群
  • 染色体不安定症候群:末梢血管拡張性運動失調症,ファンコニ(Fanconi)貧血,ブルーム(Bloom)症候群,色素性乾皮症,染色分体早期解離(PCS:premature chromatid separation),ICF症候群,ナイミーヘン(Nijmegen)染色体不安定症候群,Roberts症候群
  • 隣接遺伝子症候群・微細欠失/重複症候群:1p36微細欠失,4p- (Wolf-Hirschhorn),5p- (Cri du Chat),ソトス (Sotos)(5q35欠失),ウィリアムズ (Williams)(7q11.23欠失),毛髪鼻指節1型 1(TRPS1)(8q23.3欠失),ランガー・ギーディオン (Langer-Giedion)(8q24.1欠失),ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann)(11p15.5重複),Wilms腫瘍-無虹彩症-泌尿生殖器奇形-精神遅滞(WAGR)(11p13欠失),Potocki-Shaffer(11p11.2欠失),アンジェルマン(Angelman)(15q12欠失),プラダー・ウィリ(Prader-Willi)(15q12欠失),ルビンシュタイン・テイビ(Rubinstein-Taybi)(16p13.3欠失),ミラー・ディカー(Miller-Dieker)(17p13.3欠失),シャルコー・マリー・トゥース病1型 (Charcot-Marie-Tooth disease, type 1: CMT1A)(17p12重複),遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)(17p12欠失),スミス・マギニス(Smith-Magenis)(17p11.2欠失),Potocki-Lupski(17p11.2重複),アラジール(Alagille)(20p11.23欠失),胸腺低形成(ディ・ジョージ(DiGeorge))(22q11.2欠失),ステロイドスルファターゼ欠損(Xp22.3欠失),カルマン(Kallmann)(Xp22.3欠失),デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィー(Xp21欠失),複合型グリセロール尿症 (CGKD)(Xp21欠失),先天性副腎低形成症 (AHC)(Xp21欠失),XY女性(DSS)(Xp21重複),ペリツェウス・メルツバッハー(Pelizaeus-Merzbacher)(Xq22.2重複)
  • インプリンティング異常症としての片親性ダイソミー:父性片親性ダイソミー6(新生児一過性糖尿病),母性片親性ダイソミー7(Ressell-Silver),父性片親性ダイソミー11(ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann), 母性片親性ダイソミー11(Ressell-Silver), 母性片親性ダイソミー14(Temple),父性片親性ダイソミー14(Kagami-Ogata), 母性片親性ダイソミー15(Prader-Willi症候群), 父性片親性ダイソミー15(Angelman症候群), 母性片親性ダイソミー20(Mulchandani-Bhoi-Conlin), 父性片親性ダイソミー20
  • 生殖障害:原発性無月経,不育症,習慣流産,死産,不妊症,無精子症,乏精子症,精子無力症,Y染色体微小欠失
  • 染色体異常症関連の遺伝カウンセリングに必要な情報:染色体異常発生のメカニズム,染色体異常の頻度,染色体異常の再発率,染色体異常の胎内淘汰,染色体異常の遺伝的荷重,各染色体異常症の臨床症状の概略・明らかとなっているものについては遺伝子との関連,インフォームド・コンセント,参考書・文献,オンラインデータベース:PubMed,OMIM (Online Mendelian Inheritance in Man),Orphanet,UNIQUE,GTR (Genetic Testing Registry),EuroGentest,UCSC Genome Browser (University of California, Santa Cruz),DGV (Database of Genomic Variant),DECIPHER (Database of Chromosomal Imbalance and Phenotype in Humans using Ensemble Resources),ClinGen (Clinical Genome Resource),NCBI Gene,LRG(Locus Reference Genomic),ClinVar,dbVar,dbGaP,HGMD(The Human Gene Mutation Database),COSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer),GeneCards,「染色体異常をみつけたら」,GeneReviews, GeneReviews日本語版等
  • 培養細胞株の樹立と凍結保存:線維芽細胞,Bリンパ芽球様細胞株,EBウイルス,ES細胞,iPS細胞
5.出生前診断に関わる染色体分析

(一般目標)

  • 出生前遺伝学的検査や着床前遺伝学的検査(着床前異数体検査(PGT-A),着床前単一遺伝子検査(PGT-M),着床前構造異常検査(PGT-SR)に関わる社会的,倫理的問題の概略と世論の動向,および関連学会(日本医学会,日本人類遺伝学会,日本遺伝カウンセリング学会,日本産科婦人科学会など)の見解などを理解しており,社会的・倫理的に適切な対応をとることができる.
  • 検査の意義,母体血清マーカーや超音波ソフトマーカーと染色体異常の関係について理解している.
  • 無侵襲的出生前検査法(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)の原理(cell free DNA)と概要,意義・検出精度(感度・陽性適中率,特異度・陰性適中率)・限界,検査実施の留意点などを理解している.
  • 出生前診断を行う適応と方法(絨毛採取,羊水採取,胎児血採取,および超音波断層法など関連する技術や検査法)の概要とその限界と問題点を理解している.
  • 着床前検査に係る胚生検の手技と検査手法,および体外受精-胚移植などの概要とその限界問題点を理解している.
  • 染色体分析を含む出生前診断に関わる細胞遺伝学的分析を実際に実施することができ,また,その分析上の限界と問題点を理解している.
  • 検査依頼者から分析に必要な情報を適切に収集することができる.また,分析結果を的確に検査依頼者に報告できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 依頼された検体が適切に採取されたものか否か,検査に必要な条件を満たしているか否かを判断し,胎児に関する情報を最大限得るために,適切な培養法,検査法を選択することができる.検査材料にあわせた適切な検体前処理が実施できる.細胞の培養状態を観察し、標本作製に適する時期を判断できる.
  • 検体の取り違いを防止するために必要な手段を講じることができる.
  • 出生前診断に関わる分析を具体的に実施することができ,結果に関する評価を行うことができる.
  • 再検査の可能性や意義を検査依頼者に適切に説明することができる.
  • 検査目的,検査法,検査結果,結果の解釈などに関して,依頼者と医学的,社会的,倫理的な視点から適切に情報交換することができる.
  • 検査結果とその評価が適当なものであったかどうかを,科学的,社会的,倫理的に妥当な範囲で追跡・検討することができる.

(2)知識

  • 出生前診断の適応:高齢妊娠,染色体異常保因者,染色体異常児出産の既往,母体血清マーカーによるスクリーニング検査におけるハイリスク判定例,胎児NT肥厚,胎児奇形など.
  • 発生から出生前の段階でみられる染色体異常:卵子と精子の形成段階で生じる染色体異常の種類,頻度,および加齢の影響,初期胚にみられるモザイクと片親性ダイソミーの関係,モザイク分類,第一三半期にみられる異常,周産期にみられる異常の特徴について理解している.
  • スクリーニング検査のマーカー:第一三半期の血清マーカー(PAPP-A, free-hCG, hCG),第二三半期の血清マーカー(freeβ-hCG, hCG, AFP, uE3, inhibin A),超音波ソフトマーカー [胎児後頚部浮腫(NT),鼻骨形成(NB),三尖弁閉鎖不全(TR),静脈管逆流(DV)]
  • 妊娠中の異常:子宮内胎児発育遅延,羊水過多,羊水過少,胎児奇形
  • 疾患:染色体異常症,胎児奇形,先天性代謝異常症,など
  • 無侵襲的出生前検査において,検出できる染色体異常を理解している.感度,特異度,陽性適中率,陰性適中率,有病率の意味との関係について理解している.
  • 検体採取法:羊水採取,絨毛採取(絨毛であることを確認する方法も含む),胎児血採取(胎児血であることを確認する方法を含む),超音波検査.
  • 細胞培養法:培養液,フラスコ法とin situ法(それぞれの実施法と長所・短所)
  • 検査結果の判定:真性・偽性モザイクの判定法,胎盤組織に限定したモザイク(CPM)の判定法,母体組織混入の判定法
  • マーカー染色体と追加検査:出生前検査で検出されるマーカー染色体の経験的な由来と発生機序,出生前と出生後の頻度や表現型異常を合併する可能性,および階層的に由来を追求する検査法と手順について理解している.
  • UPDを疑う際の対処:UPDの合併が疑われる染色体異常の種類(胎盤絨毛細胞や羊水細胞に6, 7, 11, 14, 15, 20番染色体の異数性異常モザイクの検出,小型過剰マーカー染色体の検出,14, 15番染色体を含むロバートソン転座や同腕染色体の検出など),UPD症候群を疑う発育の異常(重度子宮内発育遅延,出生前発育促進),胎児の形態異常(巨舌,臍帯ヘルニア,胸郭や腹壁の異常など),およびUPD診断に必要な追加検査を理解している.
  • 染色体異常以外の出生前診断:遺伝子診断,酵素診断など
  • 妊娠と胎児の発育に関する基礎的な知識
  • 母性の生命健康を保護する法律に関する知識
6.白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体分析

(一般目標)

  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の染色体検査の適応と目的を的確に説明できる.
  • 疾患例に応じて適切な検体試料と染色体検査法を選択できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の臨床像,診断および治療の概略を説明できる.
  • 腫瘍に特徴的な染色体異常と細胞・組織形態および免疫学的表現型との関係を説明できる.
  • 腫瘍に特徴的な染色体異常と遺伝子異常の関係を説明できる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍の発生機序における染色体異常の役割を分子遺伝学的に概略説明できる.

(行動目標)

(1)技術

  • 白血病・リンパ腫の細胞培養ができる.
  • 固形腫瘍から細胞を解離し,培養することができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の染色体標本の作製ができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞の核型分析ができる.
  • 白血病・リンパ腫,固形腫瘍細胞における核型異常の判定能力を有しISCNの国際規約に従って異常核型を記載することができる.
  • 染色体分析結果が臨床上どのような意義をもつかについて,適切なコメントを記載できる.

(2)知識

  • 分子細胞遺伝学の知識:各病型あるいは腫瘍に特有な染色体異常,dmin,hsr,マーカー染色体,ISCN,がん遺伝子,がん抑制遺伝子,DNAミスマッチ修復遺伝子,細胞周期チェックポイント,免疫チェックポイント,2ヒット(2段階)仮説,ヘテロ接合性の消失(LOH),刷り込みの消失(LOI),体細胞または獲得性コピー数異常(somatic copy number alterations: SCNAs,acquired copy number alterations: ACNAs),コピー数ゲイン,コピー数ロス,コピー数不変ヘテロ接合性の消失(CN-LOH),融合遺伝子,発現異常,遺伝子増幅,染色体破砕(chromothripsis),高発がん性遺伝疾患,発がんの多段階説,放射線・化学物質の遺伝的影響,機能獲得型変異,機能喪失型変異,優性阻害(dominant negative)効果,ミスマッチ修復遺伝子,相同組換え修復(HRR)遺伝子,相同組換え機能低下(homologous recombination deficiency:HRD),複製エラー,遺伝子変異量(Tumor Mutation Burden:TMB)チロシンキナーゼ,転写因子,染色体異常と免疫学的表現型,フローサイトメトリー,腫瘍細胞遺伝学に関するオンラインデータベース(Mitelmanデータベース等),がん関連遺伝子体細胞変異データベース(COSMIC等)
  • 臨床上の知識:造血器腫瘍,上皮性腫瘍,肉腫,FAB分類,WHO分類(2017年版),免疫学的表現型リスク分類,悪性腫瘍の発病・寛解・治癒・再発,コンパニオン診断,がん遺伝子パネル検査,リキッドバイオプシー,化学療法,分子標的療法,放射線療法,骨髄移植,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植, 免疫チェックポイント阻害薬
  • 骨髄系腫瘍:骨髄増殖性腫瘍,骨髄異形成症候群,急性骨髄性白血病,慢性骨髄性白血病,好酸球増加症,生殖細胞素因を有する骨髄系腫瘍, 混合表現型急性白血病(MPAL), 肥満細胞症, 芽球型形質細胞様樹状細胞性腫瘍, 系統不詳の急性白血病 t(9;22)(q34.1;q11.2)/BCR-ABL1,t(8;21)(q22;q22.1)/RUNX1-RUNX1T1(AML1-ETO),t(15;17)(q24.1;q21.2)/PML-RARA,inv(16)(p13.1q22)あるいはt(16;16)(p13.1;q22)/ CBFB-MYH11,t(9;11)(p21.3;q23.3)/KMT2A(MLL)-MLL-T3,t(v;11q23.3)/KMT2A(MLL)融合遺伝子,FIP1L1-PDGFR融合遺伝子,t(5;12)(q32;p13)/ETV6-PDGFRB,t(6;9)(p23;q34.1)/DEK-NUP214,inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2)/GATA2-MECOM(EVI1),t(1;22)(p13.3;q13.1)/RBM15-MKL1,t(8;9)(p22;q24.1)/PCM1-JAK2,t(1;22)(p13.3;q13.1)/RBM15-MKL1,t(7;12)(p36.3;p13.2)/MNX1-ETV6,t(8;16)(p11.2;p13.3)/KAT6A-CREBBP,t(5;11)(q35.3;p15.5)/NUP98-NSD1,t(11;12)(p15.3;p13.5)/NUP98-KDM5A,JAK2遺伝子変異,NPM1遺伝子変異,CEBPA遺伝子変異,FLT3遺伝子変異,KIT遺伝子変異,RUNX1遺伝子変異,CALR遺伝子変異,MPL遺伝子変異,TP53遺伝子変異, 付加的異常(-X,-Y,1qトリソミー,del(5q),-7,del(7q),+8,del(12p),i(17)(q10),del(20q),+19,+21,+Ph),Monosomal karyotype
  • リンパ系腫瘍:急性リンパ性白血病,慢性リンパ性白血病,形質細胞腫瘍,濾胞性リンパ腫,バーキットリンパ腫,MALTリンパ腫, 移植後リンパ増殖性疾患, 組織球および樹状細胞腫瘍, t(12;21)(p13.1;q22.1)/ETV6-RUNX1(TEL-AML1),高2倍体性B-ALL,低2倍体性B-ALL,t(1;19)(q23;p13.3)/TCF3-PBX1(E2A-PBX1),t(5;14)(q31.1;q32.1)/IL3-IGH,t(8;14)(q24;q32)/IGH-MYC,t(14;18)(q32;q21)/IGH-BCL2,t(11;14)(q13;q32)/IGH-CCND1(BCL1),t(6;14)(p21;q32)/IGH-CCND3,t(12;14)(p13;q32)/IGH-CCND2,t(4;14)(p16;q32)/IGH-FGFR3,t(14;16)(q32;q23)/IGH-MAF,t(14;20)(q32;q11)/IGH-MAFB,t(8;22)(q24;q11.2)/MYC-IGL,t(11;18)(q21;q21)/B1RC3(API2)-MALT1,t(3;14)(q27;q32)/BCL6-IGH,14q11.2転座型T-ALL/TRA&TRD,7q34転座型T-ALL/TRB,t(2;5)(p23;q35)/NPM1-ALK,他ALK遺伝子再構成 t(9;22)(q34.1;q11.2)/BCR-ABL1,BCR-ABL1様,t(v;11q23.3)/ KMT2A(MLL)融合遺伝子,iAMP21,1q21増幅,del(13q),del(17p)
  • 固形腫瘍:上皮系腫瘍,骨軟部腫瘍,t(7;16)(q33;p11.2)/FUS-CREB3L2,t(11;22)(p13;q12)/EWSR1-WT1,t(11;22)(q24;q12)/EWSR1-FLI1,他EWSR1遺伝子再構成,inv(2)(p21p23)/EML4-ALK,t(2;13)(q36;q14)/PAX3-FOXO1A,t(X;18)(p11.2;q11.2)/SS18(SYT)-SSX1,t(12;16)(q13;p11)/FUS-DDIT3 (CHOP),t(12;16)(q13;p11)/FUS-ATF1,ERBB2(HER2)遺伝子増幅,BRCA1/2,NTRK1/2/3,BRAF,EGFR,FGFR,PDGFR,ROS1,ALK,N-RAS,K-RAS,FLT3,マイクロサテライト不安定性(MSI) (参照:WHO分類(2017年),コンパニオン診断薬WG:PMDA),網膜芽細胞腫(13q14(RB1)欠失)
    # データは更新され,また新たに追加されるものも出てくるため,WHO分類,ACMG recommendationなどによる最新の情報収集に努めなければならない
7.網羅的ゲノム解析技術による細胞ゲノム学的検査

(一般目標)

  • マイクロアレイ染色体検査(chromosomal microarray, CMA)やNGS染色体検査などの細胞ゲノム検査について,それぞれの適応や意義を正確に説明できる.また,各検査方法で検出され得るバリアントの種類や検査の検出限界を説明できる.モザイク感度,構造異常の解像度について説明できる.
  • 疾患関連遺伝子バリアントの臨床的意義を評価できる.
  • 細胞ゲノム学的検査で患者の診断につながる未知のCNVを検出した場合の検証方法や家系解析の意義・方法を理解している.
  • SNPアレイで検出されるヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity (LOH), absence of heterozygosity (AOH))の意義と関連するインプリンティング異常症(片親性ダイソミー)について説明できる.
  • CMA検査やNGS染色体検査で検出されたバリアントに伴っている可能性のある染色体再構成を説明できる.
  • 細胞ゲノム学的検査領域の国内外のガイドラインを熟知し,そのアップデート状況を常に把握しておくことができる.

(行動目標)

(1)技術

  • 細胞ゲノム検査で検出したバリアントをリファレンスゲノムに割り当て,ISCNやHGVSの記載にしたがって正確に表記することができる.
  • 検出されたCNVsまたはSCNAs/ACNAsの切断点を正確にリファレンスゲノムにマッピングし,バリアントデータベースを利用し,その時点で最新のアノテーションによって類似したバリアントの健常人・個体群データベース,あるいは患者・疾患データベースへの登録の有無を調べることができる.また,バリアント領域に包含される個々の遺伝子を特定して疾患関連性の有無と遺伝形式,遺伝子量効果(haploinsufficiencyまたはtriplosensitivity)の有無,機能喪失変異の登録の有無を調べることができる.
  • 検出されたCNVsまたはSCNAsの臨床的な影響度を明確にクラス分類し,患者の症状や診断名との相関を説明できる.
  • 検出されたCNVsに明らかな病原性を有すると判断された場合,患者の症状や診断名との関連を見いだせなくても,未発症疾患への罹患リスクがあることを,主治医に報告することができる.
  • 細胞ゲノム学的検査で検出したバリアントに伴う染色体再構成を推測し,両親が均衡型構造異常保因者である可能性があると考えられる場合などに,染色体再構成の検証のために患者・両親の分裂像FISH検査(適切なプローブ選択を含む)が追加検査として必要となることを主治医に報告することができる.
  • 検査で検出したCNVsまたはSCNAsのデータを集積し,個々のバリアントのクラス分類の精度を高めていくことができる.
  • 検査に用いる解析プラットフォーム毎に,用いる試薬やキット等の変更,システムの仕様や機能修正を常に把握し,必要に応じて妥当性確認を行って記録を残すことの意義を説明できる.

(2)知識

  • 遺伝子量効果の分析:CNV症候群,病的CNV領域,遺伝子疾患,OMIM Morbid genes,Probaability of Loss of function Intolerance(pLI),Haploinsufficiensy Score(HI index),健常人コピー数バリエーション・CNV,アレル頻度,ミスセンス変異のダメージ予測ツール(PolyPhen-2, SIFT, MutationTaster, PROVEAN, LRT など)
  • CNVの臨床的影響度の評価
    生殖細胞系列CNVsのクラス分類:
    American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG)/Clinical Genome Resource (ClinGen) Pathogenic; Likely pathogenic; Uncertain significance; Likely benign; Benign EuroGentest/European Society of Human Genetics (ESHG) Class 1: Benign; Class 2: Likely benign; Class 3: Uncertain clinical relevance (uncertain significance); Class 4: Likely pathogenic; Class 5: Pathogenic
    体細胞/獲得性CNAsのクラス分類:
    American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG) and the Cancer Genomics Consortium (CGC) Tier 1: Variants with strong clinical significance (1A, 1B); Tier 2: Variants with some clinical significance; Tier 3: Clonal variants with no documented neoplastic disorder association; Tier 4: Benign or likely benign Variants
  • CNV症候群・病的CNV領域:1p36(GABRD含)端部欠失,1p36(GABRD含)端部重複,1q21.1欠失[血小板減少-橈骨欠損(TAR)],1q21.1(GJA5含)反復微細欠失,1q21.1(GJA5含)反復微細重複,1q43q44(AKT3含)端部欠失,2p21微細欠失,2p15-16.1(BCL11A含)微細欠失, 2q33.1欠失,2q37(HDAC4含)モノソミー,3q29(DLG1含)反復微細重複,3q29(DLG1含)反復微細欠失,4p- [Wolf-Hirshhorn],4p16.3端部重複,5p- [Cri du chat],5p15端部重複,5q22.2(APC含)欠失 [Familial Adenomatous Polyposis],5q32.2(LMNB1含)重複 [Adult-onset autosomal dominant leukodystrophy],5q35(NSD1含)反復欠失 [Sotos],5q35(NSD1含)反復重複,6q24(PLAGL1含)重複,7q11.23(ELN含)反復欠失 [Williams-Beuren],7q11.23(ELN含)反復重複,7q21.2q21.3(SHFM1含)欠失 [Split hand/foot malformation 1],7q36.3 ZRS重複,8p23.1(GATA4含)反復重複,8p23.1(GATA4含)反復欠失,8q21.11微細欠失,9qサブテロメア(EHMT1含)欠失,10q22.3-q23.2(BMPR1A含)反復欠失,11p15.5(Imprinting Control Region 1)欠失,11p15(H19, KCNQ1)重複[ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann)] ,11p13欠失 [Wilms腫瘍-無虹彩症-泌尿生殖器奇形-精神遅滞(WAGR)],11p11.2(ALX4,EXT2含)欠失 [Potocki-Shaffer],12q14(GRIP1,HMGA2含)微細欠失,15q11q13反復欠失[アンジェルマン(Angelman)],15q11q13反復欠失[プラダー・ウィリ(Prader-Willi)],15q11q13(PWS/AS領域)反復重複,15q13.3反復微細欠失,15q24反復微細欠失,15q25.2反復微細欠失,15q26重複[過成長],16p13.3(ATR-16)欠失,16p13.3(CREBBP含)欠失[ルビンシュタイン・タイビ(Rubinstein-Taybi)],16p13.11(MYH11含)反復微細重複,16p13.11(MYH11含)反復微細欠失,16p11.2-p12.2微細重複,16p11.2-p12.2微細欠失,16p12.1反復微細欠失,16p11.2(SH2B1含)反復遠位欠失,16p11.2(TBX6含)反復近位欠失,16p11.2 (TBX6含)反復近位重複,17p13.3(YWHAE,PAFAH1B1含)欠失[ミラー・ディカー(Miller-Dieker)],17p13.3(YWHAE,PAFAH1B1含)重複,17p12(PMP22含)反復重複 [シャルコー・マリー・トゥース病1型 (Charcot-Marie-Toothニューロパチー1A型(CMT1A)],17p12(PMP22含)反復欠失 [遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)],17p11.2(RAI1含)反復欠失 [スミス・マギニス(Smith-Magenis)],17p11.2(RAI1含)反復重複 [Potocki-Lupski],17q11.2(NF1含)反復欠失 [レックリングハウゼン(Recklinghausen)病(神経線維腫症T型)],17q11.2(NF1含)反復重複,17q12(HNF1B含)反復欠失 [腎嚢胞-糖尿病(RCAD)],17q12(HNF1B含)反復重複, 17q21.3(KANSL1含)反復欠失[Koolen de Vries],17q21.3(KANSL1含)反復重複,21q1.3(APP含)重複[早期発症型家族性アルツハイマー病],22q11.21(CECR2含)反復重複 [キャットアイ症候群(22q11テトラソミー)],22q11.2(TBX1含)反復近位欠失 [胸腺低形成(ディ・ジョージ(DiGeorge)],22q11.2(TBX1含)反復近位重複,22q11.2反復遠位欠失,22q11.2反復遠位重複,22q13(SHANK3含)欠失,Xp22.33(SHOX含)欠失 [レリーワイル異軟骨骨症(Leri-Weill)],Xp22.31(STS含)反復ヘミ欠失 [ステロイドスルファターゼ欠損],Xp11.23(MAOA,MAOB含)微細ヘミ欠失Xp11.22-p11.23微細重複, Xp11.22微細重複,Xq22.2(PLP1含)重複 [ペリツェウス・メルツバッハー(Pelizaeus-Merzbacher)],Xq28(MECP2含)重複,Xq28(GDI1含)反復微細重複,Xq28(RAB39B含)反復微細ヘミ欠失,Xq28(RAB39B含)反復微細重複,Yq11(AZFa,AZFb+AZFc,AZFb,AZFc含)微細ヘミ欠失
    *DECIPHER(https://decipher.sanger.ac.uk/disorders#syndromes/overview),ClinGen(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/dbvar/clingen/pathogenic_region.shtm)参照(2020年2月現在)
    # 新たな病的CNVsが追加されると考えられ,また臨床的評価も更新される場合があるため,最新の情報収集に努めなければならない.
  • 二次的所見:ACMGが結果報告を推奨する二次的所見遺伝子リスト(ACMG SF v2.0),ClinGen Curation of the ACMG 59 Genes (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/dbvar/clingen/acmg.shtml),ゲノム医療における情報伝達プロセスに関する提言 その1:がん遺伝子パネル検査を中心に (20190327版),がん遺伝子パネル検査二次的所見患者開示ミニマムリスト暫定案,その2:次世代シークエンサーを用いた生殖細胞系列網羅的遺伝学的検査における具体的方針【改定版】(20191212)(https://www.amed.go.jp/content/000056786.pdf)
  • オンラインデータベース(2020年2月現在):
    PubMed (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/),
    OMIM (Online Mendelian Inheritance in Man)(http://www.omim.org),
    orphanet (https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/index.php),
    UNIQUE (https://www.rarechromo.org/),
    GTR (Genetic Testing Registry)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gtr/),
    EuroGentest(http://www.eurogentest.org/index.php?id=160),
    UCSC Genome Browser (University of California, Santa Cruz)( https://genome.ucsc.edu),
    DGV (Database of Genomic Variant)(http://dgv.tcag.ca/dgv/app/home?ref=),
    DECIPHER (Database of Chromosomal Imbalance and Phenotype in Humans using Ensemble Resources)(https://decipher.sanger.ac.uk),
    DECIPHER Genome Browser (https://decipher.sanger.ac.uk/browser ),
    ClinGen (Clinical Genome Resource)( https://clinicalgenome.org),
    ClinGen dosage sensitivity map (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/dbvar/clingen/ ),
    ClinGen CNV Pathogenicity Calculator (http://cnvcalc.clinicalgenome.org/cnvcalc/),
    UpToDate (https://www.uptodate.com)
     Overview of genetic variation
     Congenital cytogenetic abnormalities
     Genomic disorders: An overview
     Chromosomal translocations, deletions, and inversions
     Microdeletion syndromes (chromosomes 1 to 11)
     Microdeletion syndromes (chromosomes 12 to 22)
     Microduplication syndromes
     Sex chromosome abnormalities,
    NCBI Gene(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene),
    LRG(Locus Reference Genomic)(https://www.lrg-sequence.org),
    ClinVar(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/),
    dbVar(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/dbvar/),
    Human Genetic Variation Database (http://www.hgvd.genome.med.kyoto-u.ac.jp),
    jMorf (https://jmorp.megabank.tohoku.ac.jp/201911/),
    J Genome Browser (https://jbrowse.org),
    dbGaP(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gap/),
    HGMD(The Human Gene Mutation Database)(http://www.hgmd.cf.ac.uk/ac/index.php),
    GeneCards (https://www.genecards.org),
    The Cancer Genome Atlas (TCGA) Copy Number Portal (http://portals.broadinstitute.org/tcga/gistic/browseGisticAnalyses),
    The Compendium of Cancer Genome Aberrations (CCGA) (http://www.ccga.io/index.php/Main_Page),
    Catalog of Somatic Mutations in Cancer (COSMIC) (http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic),
    COSMIC Cancer Gene Census (https://cancer.sanger.ac.uk/census),
    the International Cancer Genomics Consortium (ICGC) Data Portal (https://dcc.icgc.org),
    cBioPortal (http://www.cbioportal.org),
    National Cancer Institute (NCI) Genomic Data Commons (GDC) (https://portal.gdc.cancer.gov/),
    PeCan Data Portal (Pediatric Cancer focused) (https://pecan.stjude.org/home),
    Mitelman Database (https://mitelmandatabase.isb-cgc.org),
    Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology (http://atlasgeneticsoncology.org/),
    Variant Interpretation for Cancer Consortium (VICC) (https://cancervariants.org/resources/),
    Clinical Interpretation of Variants in Cancer (CIViC) (http://www.civicdb.org),
    My Cancer Genome (https://www.mycancergenome.org),
    OncoKB (https://www.oncokb.org),
    Precision Medicine Knowledgebase (PMKB) (https://pmkb.weill.cornell.edu)
    # データベースは更新され,また新たに公表される関連データベースもでてくるため,最新の情報収集に努めなければならない