染色体異常をみつけたら Q&A −目次

モザイク・トリソミー21とANLL

質問:

  ANLL (M7)を生後4ヶ月で発症し治療中の、現在1歳1ヶ月の女児です。寛解にはいっても骨髄細胞にトリソミー21細胞が数パーセントありますが、正常細胞か、白血病細胞か、どちらと考えるべきでしょうか。

回答:

  生後4ヶ月でANLL発症したときの骨髄細胞染色体は、次のとおりです。
        47,XX,+21[2]/47,idem,der(9)add(9)(p13)add(9)(q22),add(10)(q22)[7]/46,XX[11]
  正常細胞(46,XX)とトリソミー21細胞(47,XX,+21)のモザイクで、トリソミー21(+21)細胞が9番染色体の付加的な異常―der(9)add(9)(p13)add(9)(q22)―を得て白血病化したものです。
  以後、生後11ヶ月までの緩解期に骨髄細胞染色体検査を4回行い、トリソミー21細胞が10%〜30%、間期核FISHで21番のシグナル3個を認める細胞が3.2%と4.5%でした。   1歳1ヶ月での染色体分析の結果:
  a) 骨髄細胞短期培養(PHA未添加)
      49,XX,+X,add(1)(p11),add(3)(p21),+8.der(9)add(9)(p13)add(9)(q22),add(12)(p11),add(14)
      (q32),del(17)(q?),+21[1]/46,XX[19]
49,XX,+X------+21細胞は白血病細胞で、4ヶ月のときの白血病細胞にさらに色々な異常が加わっています。46,XXは正常細胞です。
  b) 骨髄細胞PHA添加培養
      46,XX[11]/47,XX,+21[3]/abnormal cells[6](上記の細胞と同系統)
PHAを培養に添加したので非白血病細胞の分裂が刺激され、トリソミー21細胞が出現しました。
  c) 末梢血PHA添加培養リンパ球
      46,XX[20]
トリソミー21ラインがないのは、その頻度が低いのか、リンパ球に無いためだと思われます。
  d) 皮膚培養線維芽細胞のFISH:32核板中4核板(13%)が 21番のシグナル3個(トリソミー21)。
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総合的解釈
  モザイクトリソミー21の女児が生後4ヶ月でANLL(M7)に罹患し、治療により一旦寛解したが、1歳1ヶ月で再発したと考えます。トリソミー21ラインはPHA添加末梢血培養では検出されませんが、骨髄細胞、皮膚線維芽細胞では10%〜30%に検出されています。骨髄のトリソミー21細胞は寛解期にも検出されているので、正常細胞だと思われます。寛解期の骨髄像で異常細胞がないことがこの解釈を裏付ける条件です。
  トリソミー21細胞の頻度が低いので、Down症候群の臨床所見はないと思われます。

関連項目
  02a  トリソミー21
  09c  トリソミー21と一過性白血病

梶井 [2006年8月1日]