染色体異常をみつけたら Q&A −目次
性染色体の低頻度モザイクとdel(17)(p11.2p11.2)
質問:
41歳の女性。1回目の妊娠では表現型正常の児を産んでいます。2回目の妊娠ではトリソミー18の児を出産しましたが、乳児期に死亡しました。今度の妊娠(3回目)では、羊水染色体の分析で異常を認めませんでした。出生後の男児の血液リンパ球のG-バンド分析で、次の核型でした。
46,XY,del(17)(p11.2p11.2)
女性と夫の末梢血リンパ球の染色体は
46,XX[27]/45,X[3]
46,XY[30]
男児の核型の解釈、女性の45,X細胞の意義について、ご教示ください。
回答:
1)男児の核型:17番染色体短腕p11.2領域の欠失で、臨床的にはSmith-Magenis症候群です [04e Smith-Magenis症候群](Slager et al., 2003)。羊水染色体分析で検出できなかったとのことですが、欠失が微細(〜4 Mb)なので責められません。いわゆるde novo(新生)異常で、母年齢は関係しません。
2)女性の45,X細胞:成人、殊に成人女性の末梢血リンパ球の染色体分析で10%以下(まれに10%以上)に認める生理的現象です。成人女性の7人に1人の割合で認め、母年齢と共に増える傾向があります [02d 性染色体の低頻度モザイク]。
3)トリソミー18:母側の減数分裂、殊に第二減数分裂の不分離によって生ずることが多く、母年齢と共に増加します [02bトリソミー18と13]。
文献
Slager RE, Newton TL, Vlangos CN, Finucane B, Elsea SH: Mutations in RAI1 associated with Smith-Magenis syndrome. Nature Genet 33:466-468, 2003.
関連項目
02b トリソミー18と13
02d 性染色体の低頻度モザイク
04e Smith-Magenis症候群