染色体異常をみつけたら Q&A −目次

羊水細胞と妊婦で違う均衡型相互転座

質問:

  産婦人科医です。出生前診断のために検査会社に羊水を送り染色体分析を依頼したところ、次の均衡型転座核型だとの報告書が送られてきました。
        46,XY,t(13;16)(q12;q22)
  両親の染色体分析を勧めるコメントがついていたので、報告書と羊水細胞染色体のコピーを同封して別の検査会社に両親のリンパ球の染色体分析を依頼しました。その結果、送られてきた報告書には夫は核型正常、妊婦は均衡型転座だが羊水細胞とは切断点が違うと書いてありました。
        46,XX,t(13;16)(q14;q13)
  妊婦と胎児でそれぞれ違う転座である可能性、妊婦の転座が胎児に遺伝する途中で変化したなど色々な可能性を考え、選択的流産も考えて悩みました。既に妊娠20週を越えているので、近日中に決断する必要があります。早急にご教示いただきたく、お願いいたします。

回答:

  1)羊水細胞と妊婦のリンパ球はどちらも同じ染色体が転座に関係していて、転座切断点の解釈が違うだけです。同じ転座が妊婦から胎児に遺伝したのだと考えます。転座切断点の解釈の違いは3バンドまでが許容範囲で、この母子はその範囲に入っています。一般に羊水細胞よりは末梢血リンパ球の染色体が優れているので、切断点の解釈はリンパ球の方が信用できます。バンドの出来は別として、同じ染色体標本でも二人の技師が見て切断点の解釈が違うのは、よくあることです。片方の染色体の切断点をセントロメアから見て遠位にずらし、他方の染色体の切断点を近位にずらして解釈することもできるからです。見分けるにはバンドの幅が頼りですが、幅が似ていると見分けるのが難しいこともあります。
  2)二番目の検査会社は母子の転座が同じことを医師は分かっているものだと考えて、同じ転座で同じ切断点だが解釈が違うのだと書かなかったために、騒動になったものです。検査技師の常識は医師の常識ではないことを考えて、医師の立場に立って報告書を書くべきだと考えます。

関連項目
  03a  均衡型相互転座

梶井 [2006年8月1日]