染色体異常をみつけたら Q&A −目次
転座を伝える親は母が多い?
質問:
転座を持つ子供の両親をしらべると、母親が転座を持っていることが多いと思うのですが。
回答:
この質問は簡単そうで、深い問題を含んでいます。転座を「Robertson型転座」と「相互転座」に分けて回答します。
1.Robertson型転座
女性のRobertson型転座保因者(染色体数45)からは、転座が60%、正常核型(染色体数46)が40%の割合で子供が生まれ(Pardo-Manuel de Villena and Sapienza, 2001)、この現象をmeiotic driveと呼びます。これに対して、男性転座保因者の子供では転座:正常核型は1:1です。均衡型Robertson転座を持つ子供の両親を分析すると母親が転座保因者のことが多いのは、この理由です。多世代にわたって転座が遺伝しているときは女性を経由して伝えられることが多いのも、同じ機転で説明できます。女性の第一減数分裂では一対の染色体の片方が卵に、他方が第一極体に分かれ、卵に入った染色体だけが受精の可能性がありますが、Robertson型転座では転座染色体が卵に入りやすい傾向があることで説明できます。
不分離による転座トリソミー(染色体数46)の児が生まれる率も女性保因者の方が男性保因者よりも遙かに高いので、Robertson型転座トリソミー患者の両親を分析すると、母親が転座保因者のことが多くなります。
2.相互転座
均衡型相互転座では保因者が男性・女性のどちらでも、子供は均衡型転座保因者:正常核型が1:1の割合です。言い換えれば、均衡型転座保因者の両親を分析して父が保因者である確率と母が保因者である確率は、1:1です(両親がどちらも染色体正常のこともあります)。
3:1分離による不均衡型転座(染色体数47)では、母親が均衡型転座保因者であることが多いとされています。その代表はt(11;22)(q23;q11) 転座で、その3:1分離によって生じた47,+der(22), t(11;22)(q23;q11) が患者としてみつかります。患者の両親をしらべると殆ど例外なく母親が転座保因者です。
文献
Pardo-Manuel de Villena F, Sapienza C: Transmission ratio distortion in offspring of heterozygous female carriers of Robertsonian translocations. Hum Genet 108:31-36, 2001.
関連項目
03a 均衡型相互転座
03e Robertson型転座