染色体異常をみつけたら Q&A −目次
女性不妊と均衡型相互転座
質問:
不妊外来を受診し妊娠した27歳の妊婦が自然流産したので、流産絨毛の培養による染色体分析を依頼して次の報告を受けました。
46,XX,t(6;8)(q15;q13)
別の検査会社に妊婦とパートナーの染色体検査を依頼したら、パートナーは正常、妊婦は次の核型でした。
46,XX,t(6;8)(q11;q11.21)
どう解釈したらよいか、ご教示ください。
回答:
1)流産検体と妊婦は均衡型相互転座で、同じ染色体が転座し、転座切断点が違うだけです。転座切断点の解釈が違うだけで、同じ転座だと考えます。転座では解釈の違いは3バンドまでが許容範囲で、この例はそれを超えていますが、流産検体の染色体標本は末梢血リンパ球の標本に劣るので、これぐらいの違いはやむを得ないでしょう。妊婦の転座切断点が正解とお考えください。結論として流産胎児の均衡型転座は妊婦から遺伝したもので、均衡がとれているので流産の直接の原因ではないと思います。言い換えると、自然流産を契機に均衡型転座を持つ家系を発見したことになります。
胎盤絨毛は流産検体の中でも最後まで生きているので、染色体分析に常用します。一方、絨毛は母体脱落膜に囲まれているので、脱落膜由来の母胎組織が混入する危険があります。この場合も脱落膜細胞の染色体を分析してしまった可能性は否定できません。
2)この転座は転座切断点から先の断片が二つとも大きいので、隣接分離によって不均衡になると妊娠を自覚する前に流産する可能性が大きいと思われます。不妊外来を受診しているのは、これが起きていることを示唆するものです。
3)妊婦は27歳でまだ若いので、再度妊娠を試みるべきでしょう。妊娠して16週まで維持できたら、羊水染色体分析を受けるのが賢明だと思います。
4)体外受精の技術を使い卵割期の受精卵の1細胞を採取して間期核FISH分析し、正常または均衡型転座の卵だけを胚移植することによって、表現型正常の児を得ることが可能です。FISH分析には転座に関係した二種の染色体のセントロメアプローブと片方の染色体の転座領域内のプローブを用い、三種のプローブの蛍光がどれも二個あれば正常か均衡型転座で、胚移植できます。
関連項目
03a 均衡型相互転座
06b 不妊・無月経と染色体異常
06d 自然流産・死産の染色体分析