染色体異常をみつけたら Q&A −目次
骨髄移植と均衡型相互転座
質問:
t(8;21)(q22;q22)を伴うAML(M2)の21歳男性の緩解期に24歳の姉の骨髄を移植し、生着の確認のために骨髄の染色体分析をしたら、次の転座核型でした。
46,XX,t(7;15)(q22;q22)
1)生着したドナーの細胞に新たに染色体異常が生じた可能性はありますか。
2)転座核型は男性に不利益をもたらすでしょうか。
回答:
1)男性患者のt(8;21)(q22;q22) 転座は骨髄の白血病細胞に限局した獲得性(acquired)異常です。緩解に入ったので、白血病細胞は消失したものと思われます。替わって出現したt(7;15)(q22;q22) 細胞はXX(女性)核型なので、姉由来です。つまり、姉がこの均衡型相互転座の保因者だと思われます。姉の末梢血リンパ球の染色体分析で転座を検出すれば、構成的(constitutional)核型であることを証明できます。
2)均衡型転座を持ち表現型正常のヒトの骨髄の移植を受けても、レシピエントの不利益になることはありません。
3)姉が結婚して妊娠したら、出生前染色体分析を受けるのが理論的に適当です。
4)男性(姉)の親のどちらかが姉と同じ転座を持つ確率は90%です。
5)男性の構成的核型(白血病細胞以外の細胞の核型)が分かっていません。骨髄細胞を最初に分析したときに46,XY,t(8;21)(q22;q22) ラインのほかに46,XY(正常男性)ラインがあったのであれば、46,XYが男性の構成的核型です。46,XY細胞がなければ姉と同じ転座の保因者である可能性もあるので、末梢血リンパ球を培養分析する必要があります。
6)均衡型転座・Robertson型転座・逆位などの均衡型構造異常を総合して一般成人中の頻度は230人に1人で、骨髄移植のドナーでも同じ頻度のはずです。ドナーが均衡型構造異常を持つのは稀なことではないと言えます。別の角度から見ると、ドナーになることは染色体分析を受けることを意味します。