染色体異常をみつけたら Q&A −目次

骨髄移植後のモザイク型相互転座

質問:

  男児の急性白血病の緩解期に、女性ドナーの骨髄を移植しました。そのフォローアップとして骨髄細胞の染色体検査をしたところ、次の報告書が送られてきました。

        46,XX,t(1;13)[1]/ 46,XX [29]

  異常核型の細胞は急性白血病の再発と考えるべきでしょうか。この異常核型細胞はXX(女性)なので、ドナー由来とも思われます。そうだとすると、正常人の骨髄細胞でこのような異常細胞を認める頻度はどれぐらいあるのでしょうか。ドナーの骨髄細胞を白血病の男児の骨髄に移植したために白血病細胞に転化した可能性は考えられないでしょうか。

回答:

  1)正常女性核型(46,XX)に混じって1細胞だけ均衡型相互転座を持つ細胞があります。男児(XY)の細胞がXXになるためにはYを失いXが二倍化する必要があり、これはまず起こり得ません。したがって、この異常細胞はドナーである女性由来です。核型記載の国際規約2005年改訂版(ISCN 2005)に従うと、次のように書きます。

        //46,XX,t(1;13)[1]/ 46,XX [29]

  「レシピエントの核型//ドナーの核型」です。この場合はドナーの核型だけなので、すべて//の右側に書きます。
  2)ドナーの骨髄細胞が白血病細胞に転化した可能性はありません。分析した細胞はすべてドナー由来なので、骨髄移植は成功だと判定できます。
  3)正常人の骨髄細胞を分析して均衡型相互転座を持つ細胞の頻度をしらべた報告はありません。私の知る限りでは、正常人の末梢血リンパ球を短期培養して同様にしらべた報告もありません [03n 構造異常モザイク]。このような相互転座を持つ細胞には日常よく遭遇するので、頻度は低くないと思います。0.1%以上でしょう。このような細胞が1細胞だけなら除外して報告しないでよいとされているために、報告書を受け取る医師は眼にすることがないのです。この場合は骨髄移植後の分析であったために、ふだんなら報告しない1細胞の異常を報告したものだと思われます。

関連項目
  03a  均衡型相互転座
  03n  構造異常モザイク

梶井 [2006年8月1日]