染色体異常をみつけたら Q&A −目次
反復流産と不均衡型相互転座
質問:
過去に4回の自然流産を繰り返した28歳の妊婦がまた流産したので、流産検体の染色体検査をしたところ、次の結果でした。
46,XX,der(4)t(1;4)(q21;p15.2)
どう解釈したらよいか、ご教示ください。
回答:
1)流産検体は隣接-1分離によってt(1;4)(q21;p15.2) 転座に関与した4番染色体を受け継いだ結果として不均衡型相互転座になったもので、1番染色体のq21-qter領域が過剰(部分トリソミー)、4番染色体のp15.1-pter領域が欠失(部分モノソミー)です。部分トリソミー領域が大きいので、流産したものと思われます。
2)両親の末梢血リンパ球を用いて染色体分析をすべきです。親のどちらかが均衡型転座の保因者である確率は80%です。
3)妊婦が均衡型相互転座の保因者なら次の妊娠で自然流産する率は72%、夫が保因者なら61%です(Sugiura-Ogasawara et al., 2004)。4回流産した経歴・妊婦の年齢(28歳)・高い流産率を考慮に入れて、自然妊娠を試みるか、着床前間期核FISH分析をするか、を決めるべきでしょう。次の妊娠で16週まで維持できたら、羊水染色体分析をするのが賢明だと思います。
両親がどちらも転座を持たなければ流産胎児の不均衡型転座はde novo(新生)で、次の胎児は転座を持たないことになります。
4)親のどちらかが転座保因者なら、体外受精の技術を使い卵割期の受精卵の1細胞を採取して間期核FISH分析し正常または均衡型転座の胚を移植することによって、表現型正常の児を得ることが可能です(着床前間期核FISH分析)。FISH分析には転座に関係した二種の染色体のセントロメアプローブと片方の染色体の転座領域内のプローブを用い三種のプローブの蛍光がどれもそれぞれ二個あれば、受精卵は正常か均衡型転座で胚移植できます。
文献
Sugiura-Ogasawara M, Ozaki Y, Sato T, Suzumori N, Suzumori K: Poor prognosis of recurrent aborters with either maternal or paternal reciprocal translocations. Fertil Steril 81:367-373, 2004.
関連項目
03c 不均衡型転座
06d 自然流産・死産の染色体分析