染色体異常をみつけたら Q&A −目次

習慣性流産とt(15;15)

質問:

  33歳の主婦。自然流産を4回繰り返し、生児はありません。夫妻の染色体検査で夫は正常(46,XY)、妻は次の核型でした。
        45,XX,t(15;15)(q10;q10)
  核型の解釈と臨床的意義についてご教示ください。

回答:

  1)核型:15番の相同染色体長腕(q10)同士が転座(t)してできた染色体です。15番の短腕は失われていますが、短腕には重要な遺伝子がないので、表現型には影響しません。派生染色体なので、der(15;15)(q10;q10)とも書き、Robertson転座なのでrob(15;15)(q10)とも書きます。

  2)この夫妻の受精卵は、理論的に次ぎの組み合わせが可能です。
表1.夫妻の受精卵の組み合わせ
15番染色体 受精卵
精子 核型 運命
t(15;15)(q10;q10) 正常 転座トリソミー15 自然流産
- 正常 モノソミー15 発生早期に喪失
t(15;15)(q10;q10) - 母側片親性ダイソミー Prader-Willi症候群
- 正常 × 2 父側片親性ダイソミー Angelman症候群
  転座トリソミー15とモノソミー15は生ずる可能性は高いが、共に出生前に失われます。片親性ダイソミーは生ずる可能性が低く、生まれればPrader-Willi症候群かAngelman症候群症候群になります。正常児が生まれる可能性はありません。

  3)正常児を得るには、理論的には次の方法があります。@ 養子、A 父の精子で代理母の卵に授精、B t(15;15)(q10;q10) 精子でt(15;15)(q10;q10) 卵に授精。A、B は倫理的、現実的な問題があります。

関連項目
  03e  Robertson型転座
  03o  片親性ダイソミーと遺伝子刷り込み
  04a  Prader-Willi症候群
  04b  Angelman症候群
  06c  反復流産と染色体異常

梶井 [2006年8月1日]