染色体異常をみつけたら Q&A −目次

2型糖尿病とder(14;14)

質問:

  身長132 cmで小太りの20歳男性が、最近2型糖尿病を発症しました。食べ過ぎの傾向はありません。染色体分析で次の核型ですが、糖尿病と関係があるでしょうか。
        45,XY,der(14;14)(q10;q10)[129]/ 46,XY,+14,der(14;14)(q10;q10)[1]

回答:

  母側の片親性ダイソミー14の可能性が高いと思われます。
  1)der(14;14)(q10;q10) 転座はRobertson型転座 [03e Robertson型転座] の中でもまれで、この転座を見ただけで片親性ダイソミーと考えてほぼ差し支えありません [03o 片親性ダイソミーと遺伝子刷り込み]。親の減数分裂で2本の14番染色体が相互に転座し、もうひとりの親から14番染色体がこなければ、片親性ダイソミーになります。この例では +14,der(14;14)(q10;q10) の細胞があるので、転座トリソミー14の受精卵として出発し、発生早期に+14染色体を失ったラインが生じて、発生の進行とともに優位になったと推定できます(trisomy rescue)。
  2)母側の片親性ダイソミー14 [upd(14)mat] の患者は低身長、筋緊張低下、肥満などの組み合わせがPrader-Willi症候群に似ていて、成人型糖尿病の若年発症(maturity onset diabetes mellitus; MODY)はKayashima et al. (2002) の報告があります。DNA多型解析をできる研究者に連絡して本人・両親の血液から抽出したDNAの多型解析をして、upd(14)matを証明することをお勧めします。

文献
  Kayashima T, Katahira M, harada N, Miwa N, Ohta T, Yoshiura K, Matsumoto N, Nakane Y, Nakamura Y, Kajii T, Niikawa N, Kishino T: Maternal isodisomy for 14q21-q24 in a man with dia-betes mellitus. Am J Med Genet 111:38-42, 2002.

関連項目
  03e  Roberson型転座
  03o  片親性ダイソミーと遺伝子刷り込み

梶井 [2006年8月1日]