染色体異常をみつけたら Q&A −目次
中間部欠失:del(13)(q21q22)
質問:
歴年齢10ヶ月、発達年齢6ヶ月の女児。十二指腸閉鎖、心室中隔欠損、肺動脈弁狭窄を伴い、新生時期に染色体検査で次の異常を認めました。
46,XX,del(13)(q21q22)
1)上記の発達遅滞・多発奇形はすべて13番染色体のq21-q22領域の欠失に由来すると考えてよいでしょうか。
2)知能は予測できるでしょうか。
3)予後の予測。
4)次の児が同じ染色体異常を持つ可能性。
5)母が小児期に放射線、抗ガン剤治療をうけているとのことですが、それが染色体異常の原因になった可能性はあるでしょうか。
6)心奇形の手術を勧めるべきでしょうか。
回答:
1)13番染色体q21-q22領域の欠失(中間部欠失)です [03j 端部欠失と中間部欠失]。 Schinzel (2001) によると同領域の欠失は3例の報告があり、いずれも小奇形の集合で、この例のような十二指腸閉鎖、心奇形の報告はありません。この差が切断点の違いによるのか、顕微鏡下では検出できない微細な異常が他の領域にあるのか、色々な可能性がありますが、そのどれかは分かりません。
2)知的障害があることは確かですが、この年齢でその程度を推定するのは難しいと思います。
3)親が染色体間挿入(interchromosomal insertion)の保因者で、児が挿入の起源になった染色体を受け継いだ可能性は理論的にはあるが、現実には殆どありません [03i 挿入]。
4)次の妊娠で出生前診断をする必要もないと思われますが、それを説明した上で親が望むなら、親の意向に従うべきです。親が欠失を持つ細胞の性腺モザイク(gonadal mosaicism)で次の妊娠で欠失を持つ細胞を子に渡す可能性も、否定はできません。
5)母の小児期の放射線・抗がん剤治療が子の欠失の原因になっている可能性は否定できませんが、証明することは不可能でしょう。
6)時間をかけて繰り返し両親に児の状態を説明し、その結果として心奇形の手術については両親の意向に従うべきだと考えます。
文献
Schinzel A: Catalogue of unbalanced chromosome aberrations in man. 2nd ed. Berlin: De Gruyter, 2001, 1-966 p.
関連項目
03fa その他の構造異常カウンセリング
03i 挿入
03j 端部欠失と中間部欠失