染色体異常をみつけたら Q&A −目次
5p-と多合指趾症
質問:
両側の多合指趾症を持つ新生児で染色体分析を依頼したところ、次の結果でした。
46,XY,del(5)(p15.1)
この染色体異常と多合指趾症の関係について、ご教示ください。
回答:
核型をそのまま解釈すれば、5番染色体短腕のp15.1バンドから短腕末端までの欠失(端部欠失)です。この区間の欠失は猫鳴き症候群(cri-du-chat syndrome)を来たしますが、 多合指趾症は伴いません。染色体構造異常の切断点に隣接、または離れて、顕微鏡下では検出できない微細な欠失・重複などを伴う例の報告が増えてきました。この例でも、その可能性があります。欠失と多合指趾症が偶然に合併した可能性も否定できません。
G-バンド分析で端部欠失のように見えるときは、
@ 端部欠失
A 他の染色体との不均衡型相互転座
B 中間部欠失
C 複雑な構造異常
を含みます。A は両親の染色体分析によって証明できます。
両側の多合指趾症を伴う症候群は多くないので、多合指趾症の形状を分析し指趾以外の小奇形を観察すれば、診断できるはずです。猫鳴き症候群の症状が重なっているので、見分ける必要があります。新生児期に診断が難しくても、follow-upすれば診断できるでしょう。
さしあたり、次の処置をとることをお勧めします。
1)両親の染色体分析。
2)猫鳴き症候群の臨床所見を見分ける。
3)多発奇形症候群の専門書を参照して、多合指趾症を伴う症候群と鑑別する。
関連項目
03j 端部欠失と中間部欠失
梶井 [2006年8月1日]