染色体異常をみつけたら Q&A −目次

自然流産の部分奇胎とトリソミー・モザイク

質問:

  27歳の妊婦が妊娠16週で自然流産し部分奇胎を認めたので、腫脹した絨毛・腫脹していない絨毛・胎児皮膚を培養し染色体分析したら、次の結果でした。どう解釈すべきでしょうか。      
直径2〜3 mmの絨毛 47,XX,+12
直径5 mmの絨毛 47,XX,+12[23]/46,XX[7]
胎児皮膚 46,XX

回答:

  産科医は部分奇胎で腫脹した絨毛と腫脹していない絨毛を区別して培養し染色体分析する傾向がありますが、絨毛の腫脹の度合いと核型とは関係がありません。この場合は胎盤の複数の場所を分析した結果として胎盤に限局したモザイクを証明したので、怪我の功名です。全奇胎(complete mole)と正常妊娠の双胎では、両方の絨毛を区別して培養する必要があります。
  一部の絨毛でトリソミー12、他の部分の絨毛でトリソミー12(23細胞)と正常核型(7細胞)のモザイク、胎児は正常女性核型なので、胎盤に限局したモザイク(confined placenta mosaicism)です [03o 片親性ダイソミーと遺伝子刷り込み]。部分奇胎は三倍体によることが多いのですが、種々のトリソミー・染色体構造異常・正常核型などに伴うこともあります(Vassilakos et al., 1976)。流産の原因は胎盤に限局したモザイクだと考えます。胎児はtrisomy rescueによる片親性ダイソミーの可能性がありますが、12番染色体の片親性ダイソミーは表現型異常を伴わないので、流産には関係ありません。
  絨毛の46,XX核型は母体脱落膜の混入による可能性を否定できませんが、胎児が46,XX核型であることを考えると、絨毛の核型(モザイク)だと考えるのが自然です [06d 自然流産・死産の染色体分析]。

文献
  Vassilakos P, Riotton G, Kajii T: Hydatidiform: two entities. A morphologic and cytogenetic study with some clinical considerations. Am J Obstet Gynecol 127:167-170, 1977.

関連項目
  03o  片親性ダイソミーと遺伝子刷り込み
  06d  自然流産・死産の染色体分析

梶井 [2006年8月1日]