染色体異常をみつけたら Q&A −目次

del Xq13.3

質問:

  身長155 cm、無月経の27歳女性。橋本氏慢性甲状腺炎、若年性糖尿病、眼底出血による片目の失明、中耳炎による難聴など、色々の問題があります。染色体分析でX染色体の長腕q13.3から末端までの欠失を認めました。欠失と臨床所見との関係について、ご教示ください。

        46,X,del(X)(q13.3)

回答:

  X染色体長腕q13から長腕末端までの欠失は、1994年に10例あまりをまとめた報告があります(Geerkens et al., 1994)。身長は平均かまたはやや低く、原発性または続発性無月経です。X染色体短腕はあるので、Turner症候群の主な所見はないか、あっても軽度です。第二次性徴の発現と骨粗鬆症の予防のために、周期的エストロジェン投与が適当だと思われます。
  橋本氏慢性甲状腺炎はTurner症候群の成人の10%以上に認めるので、あっても不思議ではありません。Turner症候群では高血圧のことがあるので、眼底出血を説明できます。無月経なので最初から閉経状態で、老化が早いとも考えられます。中耳炎は欧氏管の変形による可能性があります。
  Xq13にはXISTがあり、XISTが失われるとそのX染色体は不活性化できないので、機能的に不均衡になり細胞としても生存できないとされています。この理由で、XISTを含む欠失はあり得ません。Xq13よりセントロメア近くから末端までの欠失として報告された古い文献が複数ありますが、核型解釈の間違いだったと考えられます。

文献
  Elsheikh M, Dunger DB, Conway GS, Wass AH: Turner’s syndrome in adulthood. Endocr Rev 23:120-140, 2002.
  Geerkens C, Just W, Vogel W: Deletions of Xq and growth deficit: A review. Am J Med Genet 50:105-113, 1994.
  Sutton E, McInerney-Leo A, Bondy CA, Gollust SE, King D, Biesecker B: Turner syndrome: Four challenges across lifespan. Am J Med Genet 139A:57-66, 2005.

関連項目
  05a  Turner症候群

梶井 [2006年8月1日]