染色体異常をみつけたら Q&A −目次
X-常染色体転座
質問:
低身長、無月経の15歳女児です。翼状頸や外反肘はなく、学業成績は普通で、LH、FSHの基礎値は上昇しています(性腺形成不全を示唆)。染色体分析をしたところ、次の結果でした。この核型と表現型の関係についてご教示ください。
46,X,add(X)(p11.2).ish der(X)t(X;10)(p11.2;q22.1)(wcp10+)
回答:
1)核型の解釈:G-バンド分析の結果はX染色体短腕p11.2バンドで切断し、断端に由来不明の染色体片が付加(add)したことを示唆します。10番染色体のペインティングFISH(ish)で付加染色体片は10番由来なので、G-バンド分析の結果と総合してX短腕(p)と10番長腕(q)の相互転座の隣接-1分離に由来する不均衡型転座と判定しています。
2)表現型との関係:X染色体のp11.2→pter領域が欠けているので、低身長、無月経などのTurner症候群の表現型を説明できます [05a Turner症候群]。
10番q22.1→qter領域が過剰(部分トリソミー)ですが、der(X)染色体が選択的に不活性化し、それに転座している染色体片も部分的に不活性化していると推定できます。10q22.1→qterの過剰(部分トリソミー)は普通生存しませんが、不活性化によって生存できたのだと思われます。
3)親のどちらかがt(X;10)均衡型転座の保因者である確率は高いと思われます [05d X-常染色体転座]。女児はすでに15歳になっていて、親は今後産児の予定はないと思われるので、その意味では両親の染色体分析の必要はありません。ただし、親の親族が同じ転座の保因者の可能性は残ります。例えば母の妹が将来子供を産む可能性があれば、母の染色体をしらべておく必要があります。
4)Xp11.1-p11.3を切断点とするX-常染色体均衡型転座に伊藤白斑を伴う女性が10例前後報告されています。母が伊藤白斑を持つ可能性を考えて、自然光の下で母の背中を観察すべきです。
5)女児は不妊だと予想されますが、周期的エストロゲン治療で第二次性徴の発来、骨粗鬆症の予防が期待されます。
文献
Hatchell E, Robinson D, Crolla JA, Cockwell AE: X inactivation analysis in a female with hypomelanosis of Ito associated with a balanced X;17 translocation: Evidence for functional disomy of Xp. J Med Genet 33:216-220, 1996.
関連項目
05a Turner症候群
05d X-常染色体転座