染色体異常をみつけたら Q&A −目次

羊水細胞の45,X/46,XYモザイクと胸水・腹水

質問:

  超音波検査で胎児に胸水・腹水を認めたので羊水細胞の染色体検査を依頼したら、次の結果でした。現在妊娠21週です。
        フラスコ1    45,X[3]/46,XY[17]
        フラスコ2    45,X[1]/46,XY[19]
  45,X細胞の存在と胸水・腹水の関係について、ご教示ください。

回答:

  フラスコ法で分析し、二つのフラスコの双方に45,X細胞を検出しているので、真性モザイクです。40細胞中4細胞が45,Xなので、10%に相当します。
  1)胸水・腹水
  45,X/46,XYと関係がなく、偶然に合併したと考えます。その理由は@ 出生前診断で同定した45,X/46,XYモザイク92例で胸水・腹水を認めていない(Chang et al., 1990)。A 10%の45,X細胞が胸水・腹水を来すとは考えられない。
  45,X胎児の超音波所見の主なものは頸部嚢胞と胎児水腫なので胸水・腹水と45,X細胞(10%)を結びつけて考えたくなりますが、10%しかない45,X細胞が胸水・腹水を起こすとは考えられません。
  2)出生後の問題
  出生まで妊娠を維持できたら児の末梢血リンパ球の培養による染色体分析をし、45,X/46,XYモザイクの有無を確かめます。モザイクであれば性殖芽細胞腫(gonadoblastoma)を思春期に発症する可能性があるために、問題は複雑です。出生時に外性器が正常男性でも、思春期まで定期的なfollow-upが不可欠です。その上にどんな検査・処置をするかは、内分泌学検査から性腺のバイオプシー、摘出に至るまで専門家によって方針に違いがあります。

総合的見解:
 胸水・腹水の処理と出生後の性殖芽細胞腫の可能性について限られた時間内に夫妻に説明する必要があり、カウンセリングとしても最も難しい例だと思います。限られた紙面では説明しきれないので、下の文献・関連項目をご参照ください。

文献
  Chiang HJ, Clark RD, Bachman H: The phenotype of 45,X/46,XY mosaicism: An analysis of 92 prenatally diagnosed cases. Am J Hum Genet 46:156-167, 1990.
  Huang B, Thangavelu M, Bhatt S, Sandlin CJ, Wang S: Prenatal diagnosis of 45,X and 45,X mosaicism: The need for thorough cytogenetic and clinical evaluations. Prenat Diagn 22:105-110, 2002.

関連項目
   05i  X/XY混合性性腺形成不全症
  07d  偽性モザイクか真性モザイクか
  07h  胎児超音波異常

梶井 [2006年8月1日]