染色体異常をみつけたら Q&A −目次

1絨毛膜2羊膜性異性双胎

質問:

  顕微受精・胚移植によって妊娠した妊婦が、超音波検査で男児と女児の1絨毛膜性双胎妊娠であることが判明しました。出生時に胎盤膜が1絨毛膜2羊膜性であることを確かめましたが、双胎の胎盤間の血管吻合は肉眼ではみつけられませんでした。双生児は表現型に異常はなく、外性器も正常の男性と女性です。出生時に臍帯血から採血して染色体分析し、次の結果を得ました。
        男児    46,XY[23]/46,XX[7]
        女児    46,XX[14]/46,XY[6]
  1絨毛膜性双胎は1卵性で双生児の性別は同じはずですが、この場合は異性です。異性双胎の間には血管吻合がなく血液の交換もないはずですが、この場合は血液キメラで従来の双胎の常識では理解できません。顕微受精・胚移植と関係があるか、ご教示ください。

回答:

  体外で受精培養した複数の後期桑実胚の透明帯を除いて子宮腔内に移入すると、栄養膜を形成する外胚葉が癒合してひとつの胎盤を形成すると言われています。こうしてできた1絨毛膜2羊膜性異性双胎は2003年にアメリカから1組の報告があり(Souter et al., 2003)、我が国では2002〜2003年にかけて少なくとも5組が報告されています(Miura and Niikawa, 2005)。その後、透明帯を除いて胚を移植する不妊治療施設は減りましたが、まだ実施している施設もあるので今後も生まれる可能性があります。
  我が国で人工授精・体外受精によって生まれた子供は2003年には17,400人に達し、同年度に生まれた子供の65人に1人に相当します。晩婚化による母年齢の上昇、不妊治療施設の普及などが関係しているものと思われます。
  なおISCN 2005によると、この双生児の核型は「レシピエント核型 //ドナー核型」 として次のように書きます。
        男児    46,XY[23]//46,XX[7]
        女児    46,XX[14]//46,XY[6]

文献
  Miura K, Niikawa N: Do monochorionic dizygotic twins increase after pregnancy by assisted re-productive technology? J Hum Genet 50:1-6, 2005.
  Souter V, Kapur RP, Nyholt DR, Skogerboe K, Myerson D, Ton CC, Opheim KE, Easterling TR, Shieldds LE, Montgomery RW, Glass IA: A report of dizygotic monochorionic twins. N Engl J Med 349:154-158, 2003.

関連項目
  06f  双胎

梶井 [2006年8月1日]